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高梨沙羅の客観性、人間力改革。
「化粧や服装もそうなんです」
posted2017/05/03 09:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Shino Seki
圧倒的な力を見せる女王・高梨だが、口にするのは「まだまだ」という言葉ばかり。
まだ今季総合優勝が決まる前――2016年末のインタビューをNumber Webにて特別公開。平昌五輪を見据え“理想のジャンプ”を追求するべく新たな試みに取り組む、その姿を追う。
2016年12月20日、海外遠征から帰国して1週間。国内での大会を経て、北海道・名寄で練習する高梨沙羅の表情には充実感があった。
12月頭にノルウェー・リレハンメルで開幕したワールドカップで2試合続けて優勝を果たすと、ロシアへと場所を移した第3戦こそ3位に終わったものの、4戦目で再び優勝を飾った。
「シーズンの前、いい準備ができたので、スムーズに入れました」と高梨自身も手ごたえを口にした。一方で、「まだまだです」とも語った。
その「まだまだ」の中にこそ、高梨の成長の秘密が隠されている。
自分の感覚と実際の動きがリンクさせるための工夫。
高梨が積み上げてきた実績は、もはや語るまでもないかもしれない。
中学1年生でナショナルチームのメンバーに選ばれると、中学2年生で挑んだ世界選手権で6位入賞を果たす。中学3年生ではワールドカップ初優勝を飾った。高校生となり臨んだ'12-'13年、'13-'14年シーズンは2シーズン続けてワールドカップ総合優勝を成し遂げた。
'14-'15年シーズンこそ総合2位だったが、昨シーズンは3度目の総合優勝に輝いた。しかもワールドカップ17大会のうち、実に14度優勝と、他を圧倒する力を見せつけた。
驚異的な成績の背景には、'14-'15年シーズンで得た「学び」が活かされていた。
「自分の感覚と実際の動きがリンクしていなくて、何が失敗なのか、今のジャンプはどうだったのか、それを自分の言葉で説明することもできないような状態でした。このままでは先につながっていかないと思いましたし、直す方法というか、これがあったときはこうなっているときだという結びつけを、自分の頭のたんすの中に持っておかないといけないと思いました」