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ジダンも逆らえないペレス会長の力。
「ベイルを使え」はレアル鉄の掟。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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posted2017/04/27 11:00

ジダンも逆らえないペレス会長の力。「ベイルを使え」はレアル鉄の掟。<Number Web> photograph by AFLO

ギャレス・ベイルが優れた選手であるのは間違いない。しかし、特別扱いはレアルにとってプラスにならないと思うのだが……。

ペレス会長の圧力に屈してベイルを先発に?

 にもかかわらず、ジダンは不要なリスクを冒した結果として、前半のうちに貴重な交代枠を1つ失うことになった。それだけでも十分に痛手ながら、ベイルの先発起用は単なる采配ミス以上の“重罪”とまでみなされることになった。

 それがジダンの本意ではなく、フロレンティーノ・ペレス会長の圧力に屈しての決断だったと考えられているからだ。

 ペレスのスターシステムにおいては、クラシコのような大舞台でチームの顔である「BBC」を外すことなどありえない。中でもベイルは「クリスティアーノ後」のレアル・マドリーの象徴となるべき選手であり、常にピッチに立ち続けなければならない。

ベイルを中心に据えなかったアンチェロッティはクビに。

 こうした会長の考えに従えないのであれば、レアル・マドリーで監督を続けることはできない。大げさではなく、実際にペレスはベイルを中心に据えなかったカルロ・アンチェロッティを周囲の反対を押し切ってクビにしている。

 アンチェロッティは先日発表した自伝『静かなるリーダーシップ』の中で、ある試合でベイルを途中交代させたことで会長に呼び出しを受け、代理人を通して中央でプレーしたいと訴えてきたベイルの意向を伝えられたエピソードを明かしている。以下はそのくだりだ。

「会長のオフィスへ出向くと、ベイルから電話を受けたという。私は(バレンシアに敗れた)1月4日の試合で彼をベンチに下げていた。ギャレスは中央でのプレーを望んでいると、彼の代理人が不満を伝えてきたらしい。会長はどうするつもりかと聴いてきたが、私は『何も』と答えた。シーズンの半ばにシステムを変えることなどできないからだ。この一件を境に、会長との関係が元に戻ることはなかった」

 こうしてアンチェロッティがクラブを去った後、後任に選ばれたラファエル・ベニテスはベイルをトップ下に配置する4-2-3-1でチーム作りを始めた。しかし、ただでさえアンチェロッティの解任に腹を立てていた選手たちは、会長の命令通りにベイルを贔屓するベニテスに不信感を抱き、それが最終的にはシーズン半ばの監督交代をもたらすことになったのだから皮肉なものだ。

【次ページ】 ベイルがケガの間だけは自由に選手が選べるが……。

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