酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
小林誠司が迫る史上最低打率の偉業。
規定打席達成で1割台なら35年ぶり。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2017/04/26 17:00
WBCではラッキーボーイとして大活躍した小林だが、ペナントレースでは全くの別人に。何としてでも打撃復調のきっかけをつかみたい。
谷繁、阿部、伊東、里崎、森……名捕手が多い。
佐々木誠は南海時代の1989年に.235(489打数115安打)で最下位(33位)、1992年に.322(509打数164安打)で首位打者、西武に移籍した1996年に.243(374打数91安打)でまた最下位とせわしない野球人生。
阿部慎之助は2012年に打率.340(467打数159安打)で首位打者になったが2014年には.248(459打数114安打)で最下位(27位)。わずか2年で、天国と地獄を味わっている。
こうしてみると「逆打撃王」は、捕手に縁のある記録だということがわかる。阿部慎之助、野村克也もそうだが、最多の5回記録している谷繁元信、2回の山倉和博、伊東勤、炭谷銀仁朗なども名捕手の誉れが高い。
このほかにも安藤順三、森昌彦、木俣達彦、福嶋久晃、岡村浩二、辻恭彦、大矢明彦、大宮龍男、袴田英利、中村武志、里崎智也、中村悠平、細川亨などの一流捕手も「逆打撃王」になっている。
捕手は、攻守のかなめであり、少々打てないからと言って、簡単に交代させるわけにはいかない。
“打っても良し、打たなくても良し”の境地で!
見方を変えれば、打てなくても起用され続ける捕手は、それだけ「守り」での重要度が高いともいえるのだ。
谷繁元信の「逆打撃王5回」などは、NPB史上最多出場を記録した名捕手の「勲章」と言ってもよいかもしれない。
そういう意味では、小林誠司は、悲観することはないかもしれない。打つに越したことはないが、打てなくてもずっと起用され続けることで、名捕手の道を目指すこともできるのだ。
打っても良し、打たなくても良し、小林誠司は、球史に残る選手を目指してほしい。