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日本は“ボクシング大国”なのか?
増える王者の陰で、競技人口が危機。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byAFLO
posted2017/04/23 11:30
村田諒太は、アマチュアからプロに転向し、ミドル級の世界戦にたどりついた。ピラミッドの頂点は、裾野が広がらなければ高みに届かないのだ。
日本人選手同士の試合を組むのが難しくなり……。
実際にボクサーが減ったことで、どのような影響が出るのだろうか。年間30ほどの興行を開催している「DANGAN」の古澤将太プロデューサーは次のように語る。
「2015年から日本人選手同士のカードを組むのがめっきり難しくなり、外国人選手を呼ぶ数が激増しました。外国人選手を呼ぶには経費がかかり、かつ日本人選手よりもチケットが売れません。また、できるだけ強い外国人選手を呼ぼうと努力していますが、どうしてもモチベーションの低い、いわゆる“咬ませ犬”のような選手が来日するケースも出てきます。そうすると興行の質という点でも問題が出てきます」
世界チャンピオンが続々と誕生し、世界タイトルマッチが数多く開催されるのは悪い話ではないが、一方で底辺がどんどん先細りになっているとすれば、大きな危機と言わざるを得ない。
なぜ、プロボクサーの数はここまで減り、減少傾向に歯止めがかからないのであろうか。真っ先に思い浮かぶ要因は少子化である。かつてほどボクシングの人気がなくなり、テレビなどで見る機会が減った、というのも事実であろう。
だが、それだけが理由ではない。
ジムの既得権益を守るために、新規参入は後ろ向き。
プロボクサーになるには、ボクシングジムに練習生として入門し、そこからプロボクサーになるという“叩き上げコース”、アマチュアで実績を上げ、プロデビューする“エリートコース”の大きく2つに分かれる。いずれにしても日本プロボクシング協会に加盟するジムに所属しなければ、日本ではプロボクサーにはなれない。
ところがジムに入る練習生の数が年々減っている。少子化はもちろんあるし、他のスポーツクラブとの競合もある。一方で、昔は元気だったジムの会長が高齢化し、かつてのような力を失って若い練習生を集められない、というケースが近年では目につくようになってきた。
であれば加盟ジムを増やし、どんどん若い人材を引き入れればいいと思うのだが、現在の協会は新規加盟ジムを増やすことには後ろ向きだ。むしろ加盟ジムの既得権を守るために、ジムの数を抑制しようという方向に舵を切っている。これでは選手の数は増えない。