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“安定王者”だけでは物足りない!?
井岡一翔が目指す、具志堅越えの先。
posted2017/04/24 11:40
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Kyodo News
WBA世界フライ級チャンピオンの井岡一翔(井岡)が23日、エディオンアリーナ大阪でランキング2位の挑戦者、ノクノイ・シットプラサート(タイ)に大差判定勝ちで5度目の防衛を成功させた。
これで井岡の世界戦勝利数は具志堅用高氏と並び、日本人最多の14勝となった。日本を代表する実力者、井岡はこの先どのような道を歩むのだろうか。
まずは試合を振り返ろう。前回大みそかのV4戦で、スタンプ・キャットニワット(タイ)にフラッシュとはいえダウンを喫した経験がそうさせたのだろう。井岡は防御への意識をこれまで以上に高め、慎重なスタートを切った。それでも、得意とする“危なげない”試合運びに落ち着くまでに時間はかからなかった。
ジャブを軸に、巧みなポジショニングで好打を積み重ねていくのが井岡のスタイルだ。ジャブ、ボディブローで挑戦者を少しずつ削っていき、後半は右ストレートを何発も打ち込んでノックアウトの期待を高めた。10回以降は完全なワンサイドとなったものの、ノクノイの粘りにあって、ダウンシーンのないままゴールテープを切る。最終スコアは117-110が2人、もう1人が116-111だった。
安定王者に必要なのは、インパクト。
「倒しきって4連続KOしたかったけど、相手がしぶとかった。そこは悔しい」(井岡)
「KO負けしなかったのは勝ちに等しい結果」(ノクノイ)
王者と挑戦者のコメントに、両者の力関係と試合内容が端的に表現されていた。
井岡は勝つべくして勝ち、具志堅氏の持つ記録と並んだ。本人は「この内容では具志堅さんに並んでもすごく恐縮な気持ち」と謙遜したが、初めて世界王者となった2011年から6年にわたりトップで活躍してきた事実は、胸を張れるものであろう。
安定チャンピオンに今後求められるのは、よりインパクトの強いファイトにほかならない。そのためにはやはり、試合内容と対戦相手の充実こそがキーとなる。