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1-7大敗にめげない“シンデレラ”。
セリエ弱小クラブ、野心の結末は?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/04/08 11:30
今季セリエAでは26試合で5ゴール、6アシスト(30節終了時点)。アタランタ躍進を支える巨漢FWペターニャは代表にもデビューした。
セリエA屈指の育成王国が、上位を狙う方向転換。
育成王国として名高いアタランタだが、トップチームの年間目標は長い間セリエA残留のみとされてきた。クラブの最優先業務は若年層選手の発掘と育成で、極端な話、トップチームは残留さえしていれば業務計画も運用法も前年と同じものを流用できるし、コストは下がり、効率がいい。
控えめな経営方針は堅実かつ模範的でも、裏を返せば野心と覇気に欠けている。
しかしクラブ創設110年目を迎える今季、時代の変化を感じ取ったペルカッシ会長は勇気ある決断を下した。
稀代の戦術家ガスペリーニの新監督招聘を契機として、クラブがこれまで封じてきた“勝ちにいく、上位を狙う”方向性を目指し始めたのだ。
「私はうちを弱小地方クラブとは思っていない。アタランタは目標のハードルを上げるときだ」
攻撃サッカー信奉者の指揮官ガスペリーニは、挑発的に豪語する。
若手有望株に次々と引き抜きの声がかかるが……。
黒星が先行した開幕直後の低迷から脱出し、その後の快進撃の原動力となったのは、ガスペリーニが大量起用した'90年代中盤以降生まれの若手選手たちだった。
彼らは鬼教官ガスペリーニの指導によって、多種多様な攻撃パターンを抱える3-4-1-2に適応すると、ナポリやローマといったCL出場クラブを次々に撃破した。
今季の主力に抜擢した“'94年組三羽ガラス”の一人、MFガリアルディーニを、冬の移籍市場でインテルから引き抜かれ、続けてDFカルダラがユベントスと保有権契約を結んだ。残る1人、MFコンティにはチェルシーが今から熱を上げているし、20歳にしてコートジボワール代表に定着しつつあるパワフルなMFケシエは今夏のローマ移籍が内定済み、とまことしやかに噂されている。
ただ、今季からガスペリーニの薫陶を受ける選手たちが、指揮官へ寄せる信頼は相当に厚い。