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1-7大敗にめげない“シンデレラ”。
セリエ弱小クラブ、野心の結末は?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/04/08 11:30
今季セリエAでは26試合で5ゴール、6アシスト(30節終了時点)。アタランタ躍進を支える巨漢FWペターニャは代表にもデビューした。
ファンからの声援に「俺たち、まだ死ねないな」。
彼らはバスを降りる選手たちの名前をひとりひとりコールし、盛大に勇気づけた。DFカルダラや主将ライモンディらはサポーターたちからもみくちゃにされながら、感謝の言葉を振り絞った。
大敗の経験を無駄にしてはならない。選手たちは互いに言い合った。
「俺たち、まだ死ねないな」
折れかかっていた心は、薄闇の練習場で踏みとどまった。
大敗の翌週、出場停止処分や故障で戦力不足ながらもアタランタはペスカーラ相手にしぶとく勝利を収め、クラブレコードとなる勝ち点55に到達した。
さらに翌週、4月最初の週末の30節で、ガスペリーニの愛着ある古巣ジェノア相手に5得点を奪って大勝した。
ガスペリーニが辛酸を舐めたインテルへのリベンジを。
欧州サッカーの世界では、不遇だった選手やチームが突然表舞台で脚光を浴びると、“シンデレラ”に喩えられることが多い。
かつてドナドーニ(現ボローニャ監督)やインザーギ(現3部ベネツィア監督)など優れた選手を数多く輩出してきたアタランタは、さながら一流プレーヤーというシンデレラを舞踏会に送り出す“魔法使いのおばあさん”のようだ。
自らは才能あふれる若手を送り出す裏方となり、カンピオナートでは残留以上を望まず。魔法使い自身は華やかな舞台に出て行くことはなかった。
だが、同じ“ネラッズーリ(=黒青)”のクラブカラーを持つインテルで、かつて辛酸を舐めた偏屈な戦術家ガスペリーニは、ビッグクラブの引き立て役に甘んじることを良しとせず、自ら先頭に立って、チームを26年ぶりの欧州カップ戦へ導こうとしている。
もしシーズンの最終順位でインテルを上回ることができれば、アタランタは自動的にEL出場権獲得へ大きく近づくはずだ。
赤い煙の充満する闇夜の練習場で、ファンの熱い出迎えを受けたガスペリーニは彼らの前で誓った。
「欧州カップ戦へ出るために、我々は最後の最後まで挑み続けるぞ」