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西武黄金時代OBの著書が面白い。
辻&伊東が語る清原、広岡、玄米。

posted2017/04/04 07:30

 
西武黄金時代OBの著書が面白い。辻&伊東が語る清原、広岡、玄米。<Number Web> photograph by Kyodo News

1994年のオールスター戦での風景(右から、森監督、石毛、清原、辻、伊東)。この年、ついに森監督が西武を勇退。督在任中の9年間で8度のリーグ優勝、6度の日本一を記録した。

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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Kyodo News

 野球本はワインと似ている。

 以前出た本を棚で寝かせている内に、熟成されて味に深みが出る。

 例によってぶらりと本屋に出かけたら、青・赤・緑の見慣れた色使いの「辻発彦 埼玉西武ライオンズ新監督就任」という帯が巻かれた新書を見つけた。2012年8月発売の一冊が野球界の動きに合わせて、5年後にまた生き返る――これもまた野球本の魅力だ。

 それにしても、あの守備の名手・辻が西武監督として戻って来るとは感慨深い。

 自分は少年ジャンプで『キン肉マン』の連載が始まり、所沢で西武ライオンズがスタートした1979年生まれの埼玉出身。いわば西武線に乗って遊びに行き、テレビ埼玉で夕方からの全日本プロレスとライオンズアワーを観て育った世代である。当時の巨人は憧れの東京のチーム、西武は地元の自慢のチームという感覚。いわば辻は俺らのヒーローだった。

 気が付けば、あの頃のスーパースターたちが続々と監督として現場に戻ってきている。

 今回は西武黄金時代のOBで、現在パ・リーグ各チームで指揮を執る男たちの本を読み解いてみよう。

辻の西武への愛着を感じさせるエピソードが。

【『プロ野球 勝ち続ける意識改革』(辻発彦著/青春出版社/2012年8月15日)】

 '17年開幕時に読むのにこれほどタイムリーな本があるだろうか?

 広岡達朗監督、森祇晶監督、野村克也監督、王貞治監督、落合博満監督と自身が現役と指導者時代にともに戦った名将たちを振り返る内容。いわば一冊まるごと「辻発彦の監督論」だ。

 '11年限りで中日のコーチ職から身を引いた辻は、解説者時代を挟み'14年から再び中日のユニフォームを着るわけだが、その充電期間に出された新書。この本は発売5年後の今読むと非常に興味深い記述の連続だ。

 なにせ開始5行目で「('12年の充電期間は)西武球場には自宅が近いこともあってちょいちょい顔を出している」とあっさりカミングアウト。西武第二球場で若手が泥だらけでノックを受ける姿を熱心に見つめながら、そこに30年前の何者でもなかったルーキー時代の自分の姿を重ねる辻。

 恐らく、その様子を西武関係者も見ていただろう。

 なぜ西武辻監督なのか、いきなり冒頭で深読みさせてくれる。

【次ページ】 30年以上たっても玄米の恨みは忘れていない。

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