野ボール横丁BACK NUMBER
清宮幸太郎を苦しめたインハイ攻め。
東海大福岡が突いた天才の弱点。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/03/27 18:10
清宮幸太郎の春は、2回戦で終わった。打撃の弱点を徹底的に突かれたセンバツは、夏、そしてその先のために大きな経験になった。
東海大福岡監督「(清宮は)ローボールヒッター」
そこへ行くと試合前、東海大福岡を率いる杉山繁俊が語っていたニュアンスは、少し違った。
「どこも低めを突いてヒットはOKという攻めをしているけど、私は、基本的にローボールヒッターだと思っているので、胸元をついて欲しいと思っている」
つまり、逆だ。外を見せ球にし、インハイで勝負させた。
試合前、早実の監督・和泉実が「安田君は相当、精度が高いよ。際を攻めてくる」と警戒していたように、東海大福岡のバッテリーは監督の要求に見事に応えた。外の変化球とインハイの直球をほぼ交互に使い、清宮を翻弄した。
インハイにコントロールミスは1球もなかった。
いかにも明晰そうな捕手の北川穂篤が言う。
「下からすくいあげる感じのスイングなので、インハイは苦手だとすぐに気づきました」
北川はインハイを投げさせるとき、ほぼ中腰で構えた。そして、そこのボールに清宮はことごとく手を出すのだが、中には甘い球もあったにもかかわらず、ほとんどがファウルか、詰まらされてしまったのだ。
「打席の中で、浮き上がってくる感じがあって、球速以上にキレがあった」
中には明らかなボール球もあったが、清宮いわく「つい、手が出てしまう」とのこと。
捕手の北川はこう分析する。
「初球、ほとんど外の緩いボールから入ったので、近くにボールがくると、球速もないので、つい打ちやすそうで手をだしてしまったのだと思います」
確かに安田がインハイを投じるときは、高過ぎず低過ぎない、絶妙なところを突いていた。
外の変化球が甘くなって清宮に打たれたシーンはあったが、インハイを突くときだけは「コントロールミスは1球もなかった」(北川)という。
北川は、こう清宮にエールを送る。
「夏まで弱点をどう修正してくるのか。楽しみですね」
130キロのスピードボールがなくても、清宮を攻略できる。おそらくは東京中のチームが春以降、この日の東海大福岡バッテリーの攻めを参考にしてくるに違いない。