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レブロンは「NBA最後の高卒大物」?
米スポーツ界が学歴重視の背景とは。 

text by

林壮一

林壮一Soichi Hayashi Sr.

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photograph byAFLO

posted2017/01/26 08:00

レブロンは「NBA最後の高卒大物」?米スポーツ界が学歴重視の背景とは。<Number Web> photograph by AFLO

レブロン・ジェームズこそは、NBAの「スーパーヒューマン」である。しかし、彼のようになれる選手はほとんどいないのだ。

NBA選手の6割が引退後5年以内に財産を失う!?

 NBAで13シーズンを過ごしたアドナル・フォイルは警笛を鳴らす。

「2009年に『スポーツ・イラストレイテッド』誌が弾き出したデータによれば、約60%のNBA選手が、引退から5年以内に財産の全てを失っている」

「私が新人の頃に関係者が語っていたが、NBA選手は引退後、87%が離婚する」

「マイケル・ジョーダンが離婚した際、1億6800万ドルを元妻に支払わねばならなかった」

「選手としての平均寿命は4.8年。出来るだけ早く、セカンドキャリアを検討すべきだ」

 質実剛健をモットーとするフォイルは、NBA選手がゴージャスな家や車、貴金属、そして派手な遊び方をして身を持ち崩してしまう様に心を痛め、人間としてのあり方を問う。彼は次世代の若者たちに、こんな言葉を投げかける。

「一流選手として認知されていた選手Aには、カリスマ性があった。が、世評が悪く解説者の仕事には就けなかった。一方、選手Bはカレッジ卒業の“教養”を武器にチームメイトから尊敬されていた。引退後、アシスタントGMの職を得ながらMBAを取得し、いずれGMになるだろうと噂されている。Aが残した財産は20万ドル強。Bのそれは400万ドル弱。この違いをしっかりと考えてほしい」

 華やかに見えるNBAの現実である。

日本でもセカンドキャリアの困難さは大きな問題。

 片貝は言う。

「国によって大学制度や学位取得に対する意識が異なるものの、教育ファースト、スポーツセカンドの考え方に、私は賛成します。現状、日本のプロバスケットボール界でもセカンドキャリア創造の難しさを痛感しており、クラブが一度契約した選手全員分の雇用を、引退後に創出できるかは疑問です。

 引退後、社会人として比較的良い状況からスタートするには大学の学位があった方が優位なのは間違いないですから、潰しがきく大学の学位取得を勧めます。Bリーグは日本バスケットボール協会と共に大学との提携を模索しており、NCAAのように大学バスケを産業として樹立できないかという案も出ています。

 大学バスケの注目度が上がり、稼げないにしても大学でプレーするステータスや強化プログラムが向上すれば、なお一層大学バスケを目指す選手が増え、良い選手がプロ入りするという好循環が生まれるのではないでしょうか」

 社会におけるスポーツの位置付けにそもそも大きな違いがあるが、日本のスポーツ界が米国のバスケットボールから学ぶことは山ほどある。

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