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レブロンは「NBA最後の高卒大物」?
米スポーツ界が学歴重視の背景とは。
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph byAFLO
posted2017/01/26 08:00
レブロン・ジェームズこそは、NBAの「スーパーヒューマン」である。しかし、彼のようになれる選手はほとんどいないのだ。
大学ナンバーワンの賞は、成績が悪いと対象外になる。
大学ナンバーワン選手に贈られるウッデン賞なるタイトルがある。学生の本分は勉強であるという考えがベースにあるため、同賞はGPA2.0を下回る選手は対象外となる。現在、NBAで活躍するケビン・デュラント、アンソニー・デイビス、ブレイク・グリフィンらも受賞者だ。NCAAで活躍した選手がNBAに飛び込んでいく昨今、学生レベルでは最高級の栄誉だといっていい。
成績が悪過ぎて同賞の対象外となった折、シモンズは吐き捨てている。
「よく分からないね。俺は自分がNCAAのベストプレーヤーだと信じているし、大した問題じゃない。ウッデンって先生の名前かい? 選ぶ人間たちの基準があるんだろう? 俺はチームの勝利しか考えちゃいないさ」
しかしながら、彼がNCAAでプレーした終盤は、アリーナの観客たちから「GPA! GPA!!」と、繰り返し野次られた。その背景には、いかにバスケット能力が優れていても、学業を疎かにしたことへの嘲笑が込められていた。
現ニックスのエースも大学時代のGPAは1.8。
現ニューヨーク・ニックスのエース、カーメロ・アンソニーもGPAが1.8しかなく、この賞を逃した。そして、1シーズン限りで大学生活に見切りをつけ、NBAに飛び込んでいる。
14年におよぶキャリアのうち9度オールスターに選出され、北京、ロンドン、リオと五輪を3連覇した合衆国代表選手であることからも、アンソニーは間違いなくバスケットボール界の勝ち組である(ここ数週間は、起用を巡ってニックスの監督やコーチ陣との確執が話題となっているが)。
シモンズは、アンソニーのようになることを願っているのかもしれない。だが、開幕から怪我に苦しむシモンズがNBAで大成できなかった場合、大学中退のキャリアでアメリカ社会を渡っていくのは茨の道だと言わざるを得ない。合衆国において、大卒者の生涯平均所得はおよそ250万ドル。これが高卒者になると、140万ドルとなってしまう。