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NBAを目指した日本人が感じた事。
「上下関係や選手の萎縮が無い」
posted2017/01/25 08:00
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph by
AFLO
元NBAプレーヤー、アーモン・ジョンソンが巣立ったハグ・ハイスクールに入学した日本人の若者がいた。2011年8月のことだ。中山政希(20)は、どうしてもアメリカでバスケットボールがやりたい、と15歳で渡米した。中山はハグ・ハイスクールを経て、つい最近まで、フェザー・リバー・カレッジ(大学)でプレーした。
「日本の高校が嫌だ、ということではなく、僕にはNBAしか見えていませんでした。練習自体は、日本もアメリカも大きな差はありません。練習量は日本の方が多いくらいです。ただ、個々の選手が持っている価値観は全く違いますね。
日本の選手は監督の言葉に忠実ですが、プラスアルファが無い。指導者が厳しいため、怯えてやっているところがあります。試合中に余計なドリブルをすると、ベンチから怒鳴られるでしょう。アメリカはそういうことが一切無いです。本人が出来るのなら、やっていい。“お前の判断に任せる”ということです。自由がありましたね。だから、アメリカの選手は、皆、判断力が備わっています」
小中学生なら日本人の方が上手いが……。
どんな競技でも、習う、教わる、と受身でいるうちは、アスリートとしての自己をつくり上げることが出来ない。
「日本の場合、例えばセンターだったらインサイドの練習ばかり。ガードだったら、ガードの練習だけ。でもアメリカの選手は、ポジションに関係なく、すべてトライしてみるんです。そのうえで、自分の武器を徹底的に磨いていきます。
小中学生レベルなら、日本人の方が上手ですよ。アメリカは、その年代のうちはやりたいようにやらせ、高校くらいからフォーメーションを覚えさせます。アメリカは、中学生までは、いかにバスケが楽しいかを伝えていますね。NBAが身近にあって、スター選手を真似てみたり、膨らんだイメージをトライできる環境にあります。だから、ポジションに囚われない選手が育つんですよ」
とはいえ、ハグ・ハイスクールにも怒鳴るコーチは存在した。首から下げていたストップウォッチを投げる指導者の姿もあった。が、選手がミスしたからと言って、暴力を振るう輩にはお目にかからなかった。
「基本的に、選手を伸ばすことを前提とする指導です。僕が受けたアドバイスは『自分で感じてプレーしろ』でした」