スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
青学の存在で、優勝を信じられない?
早稲田がハマった「追う者の弱み」。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/01/12 07:00
過去2回6位、5位だった往路で、今年は2位と大きく順位を上げた早稲田大学。それだけに、9位だった復路が悔やまれる。
タイム以上に大きな、集団を抜け出す意義。
こうなると、3区を走った主将、平和真(4年)に選択の余地はない。中位で持ちタイムの劣る選手と牽制し合い、低迷してしまっては、青学大との差は開くばかりになる。集団から抜け出して2位へ浮上したのは平のお手柄だった。
ただし反動もあり、3区の後半では、区間賞を獲得した青学大の秋山雄飛に突き放されてタイム差は1分22秒にまで広がった。「危険水域」ま間近だった。相楽監督は振り返る。
「平は15キロ過ぎに動きが悪くなりました。それも前半から突っ込んだ結果だと思います。差は開いたものの、早稲田としては3区で抜け出せたことで、追撃態勢は整いました」
追撃を鈍らせた「追う者の弱み」。
ADVERTISEMENT
もったいなかったのは、4区と5区だ。
往路優勝するならば、この2区間での「直接対決」で青学大に勝利することが必須条件だった。可能ならば4区で30秒強、そして5区で1分以上勝って、逆転する。
4区は出雲4区の区間賞、全日本3区の区間2位と好調の鈴木洋平(4年)。青学大の森田歩希との力量を比較すると、30秒詰めることは可能だったと思う。しかし、ここで7秒開けられてしまう結果となる。
やはり、箱根特有の「追う者の弱み」が出てしまったか。
見えない相手を追った場合、前半で力み、後半に先行するランナーに離されてしまう(先行者は落ち着いて入れる「特権」がある)。1区から続いた微妙な歯車のズレが、4区の意外な結果につながってしまったかもしれない。
山上りの安井雄一(3年)は上り始めてからの動きが思わしくなく、ようやく下りに入ってから差を詰めたが、33秒差に詰めるのがやっとだった。
青学大の原晋監督が、往路優勝した時点で「総合優勝に大きく近づいた気がしました」と話したのは当然だっただろう。
早大にとって、ひとりあたり「6.6秒」という差が、復路に重たくのしかかることになる。