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発言は優等生でも、あまりに魅力的。
CWCの会見に溢れたジダンの“オーラ”。 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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posted2016/12/18 07:00

発言は優等生でも、あまりに魅力的。CWCの会見に溢れたジダンの“オーラ”。<Number Web> photograph by AFLO

「名選手は名監督にあらず」という格言は、ジダンには当てはまらない。マルセロの視線にも、それが現れている。

メキシコ人の女性レポーターにかけた一言。

 でも憧れの人を前にして、ただのファンみたいになっていたのは、僕だけではなかったと思う。例えば、ばっちりとメイクを決めたメキシコ人の女性レポーターは、最前列の中央に座り、少し上ずった声でこんな質問をした。

「クラブ・アメリカは今年100周年を迎えることもあり、選手やファンは明日の試合を世紀の一戦と捉えています。しかも相手はあなた方、レアル・マドリー。モチベーションは極めて高いです」

 するとレアルの指揮官は彼女の緊張を少しでも和らげようとしたのか、親密に響く声でこう答えた。

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「それはよくわかるよ。レアル・マドリーとの対戦を素晴らしい機会だと感じるチームは、スペインにも多い。クラブ・アメリカにとって、明日の試合はとても重要だろう。でもそれは我々にとっても同じさ」

先制点の直後にカゼミーロに修正を指示。

 ただ、余裕を感じさせるこのコメントの前に一度、語気を強めた時があった。「この大会に臨むにあたり、困難な点は何ですか?」と問われ、「長旅と時差は大変。でも私たちはレアル・マドリーだ。いついかなる試合にも勝たねばならない」と言った時だ。そのシリアスな表情は、FIFAが20世紀最高と認めたクラブを率いる指揮官にふさわしいものだった。

 翌日の試合では、「長旅で疲れていたから、最初の25分は難しいものになった」とマンオブザマッチに選出されたルカ・モドリッチが振り返ったように、序盤はやや苦しんだが、前後半のロスタイムにカリム・ベンゼマとクリスティアーノ・ロナウドが1点ずつを決めてきっちりと勝利。

 ベンゼマの先制点の直後には、指揮官は年下の同胞と抱擁し、試合後の会見ではそれについて訊かれていた。でも僕は、さらにその後にカゼミーロと話していた姿の方が気になった。ジダンが絶大な信頼を置く陰の最重要選手にポジションの修正を指示したのだろう。リードした時にこそ兜の緒を締めるような振る舞いは、優れた監督の証だと思う。

【次ページ】 ロナウドの500得点も、無敗記録も、彼の下で。

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