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FAで補強すると成績はどうなるか。
過去のデータで見ると来季巨人は?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKyodo News
posted2016/12/09 11:00
久々に「何でも欲しがる巨人」が帰ってきた。危機感が生んだ大補強は、果たして来季実を結ぶだろうか。
選手を獲った側が成績を落とすケースもある。
獲ったほうが成績を落とし、獲られたほうが成績を上げるという逆転現象もあった。'94年に巨人の駒田徳広を獲得した横浜が最下位に落ち、巨人が日本一になったケースだ。巨人が中日の落合博満を獲得した年で、落合に押し出される形で駒田が横浜に移籍しているという事情はあるが、興味深いケースだ。
翌'95年の川口和久のケースは、獲られた広島が前年の3位から2位に成績を上げ、獲得した巨人が日本一から3位に成績を下げた。広島はこの時期、のちにFAでチームを去る江藤智、金本知憲が健在で、野村謙二郎、正田耕三、前田智徳、緒方孝市らとリーグ屈指の打線を形成していた。下降期に差し掛かっていた川口の離脱は大した痛手ではなかったということだ。
この'95年、巨人はヤクルトの広沢克己も獲得し、さらに直近の3年間で86本塁打を放ったハウエルも強奪している。これほど補強しても巨人は日本一から3位に成績を落とし、ヤクルトは2年ぶりの日本一に輝いている。広沢の穴は前阪神のオマリー、ハウエルの穴は新外国人のミューレンが埋め、投手陣は山部太、ブロス、石井一久、吉井理人、伊東昭光が10勝以上挙げ、3位巨人に10ゲーム差をつけて圧勝した。
チームが落ち込んでいる時に主力が流出すると……。
獲られたチームが最下位に沈んでいるのは'02年の横浜(谷繁元信→中日)、'11年横浜(内川聖一→ソフトバンク)、'12年DeNA(村田修一→巨人)の3例。いずれも暗黒時代の底で呻いていた横浜、DeNAで、チーム全体が落ち込んでいるときにFAで選手が流出するとひとたまりもないという好例だ。
2016年12月現在で例えるなら、中日が大島洋平、平田良介(ともに外野手)に飛び出されていたら同じような状況を迎えていただろう。危うく中日は横浜、DeNAの二の舞を踏むところだった。
獲られた球団が日本一になったのが、'08年の西武だ。打率.315、18本塁打の和田一浩がFAで中日へ、さらに27本塁打のカブレラがオリックスに移籍しながら日本一になった。
この年、中村剛也が46本塁打で覚醒、以下中島裕之、ブラゼル、G.G.佐藤、ボカチカも20本塁打以上放ち、圧倒的な長打力で他球団を圧倒。西武は松井稼頭央がメジャーに移籍した'04年にも2位から日本一に成績を上げているので逆境に強い球団と言える。