“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
鹿島の決壊を防いだ門番・昌子源。
世代交代とタイトル、二兎を追う。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byKiichi Matsumoto
posted2016/12/02 11:00
鹿島伝統の「3番」は肉体的にも、精神的にもタフでなければならない。昌子にもその風格が備わってきた。
味方が「もうええって」となるほどのコーチングを。
「90分間ずっと声を出し続けられるのは自分しかいないと思っている。鹿島の守備を背負うと言うことは、生半可な気持ちではいけないし、ましてや“自分だけで良い”訳ではない。僕とソガさん(曽ヶ端)で全体をしっかりと見渡して、危険な場所や状況があれば相手に伝わるまで言うし、たとえ味方が『もうええって』と思っていても、しつこいくらい言う。むしろ『もうええって』と思われるまで言わないとダメ。そうしないと情報共有や意思統一を出来ない。チームのために全力を尽くすと言うことは、そういうことをしっかりとやりきってこそ言えることだと思う」
怪我で離脱する時期もあったが、彼のスピリットは着実にチームの中で広がっていった。ファーストステージではリーグ最少失点(17試合10失点)で優勝し、2009年(1ステージ制)以来、6年半ぶりのリーグタイトルを手にすることが出来た。
だが、セカンドステージは低迷に陥り、失点を重ねて思うように勝ち点を積み上げられなくなって行く。チームの歯車が狂ってしまった中でも、昌子はどう立て直すべきかを考え続けた。
「ピッチの中でどれだけ本気で勝ちたいと思ったか」
ADVERTISEMENT
例えば9月の柏戦で、0-2の敗戦を喫したときのこと。試合後のミックスゾーンは重い空気に包まれたが、彼は気丈に報道陣の前に立ち、自分達の課題や問題点をはっきりと口にした。
「いったい、ピッチの中でどれだけの選手が“本気で勝ちたい”と思っていたか。もちろん勝ちたくない選手は一人もいない。でも、本気で何とかしないといけない、“何が何でも”という気持ちには差があった。これではいけないんです。あっさりやられてしまってはダメなんです」
CBとして失点を喫してしまった悔しさは当然ある。だが、この試合で昌子がいなかったら、もっと崩れた試合になった可能性は高い。誰よりも声を張り上げ、球際や競り合いで激しくいき、闘争心を出している姿は、低迷していたチームにとってこれ以上崩れないための“生命線”になっていた。