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ドラフトは六大・東都より地方大学?
上位24人中10人指名から見えるもの。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/10/30 11:00
5球団競合でソフトバンクが指名権を得た田中。高校時代は本人もこれほどまでの注目株になるとは思っていなかったはずだ。
高校で藤浪と春夏連覇した立大・澤田は8位指名。
3位以下は地方の大学勢が10人、六大&東都が6人という割合となった。
六大&東都勢は、田中和基(西南学院高→立教大→楽天3位・外野手)、森山恵佑(星稜高→専修大→日本ハム4位・外野手)、田村伊知郎(報徳学園→立教大→西武6位・投手)、宗接唯人(神戸国際大附高→亜細亜大→ロッテ7位・捕手)、澤田圭佑(大阪桐蔭高→立教大→オリックス8位・投手)、佐野恵太(広陵高→明治大→DeNA9位・内野手)である。
田村、澤田は甲子園も経験し、高校卒業時にはドラフト候補にも名をつらねていた。澤田などは藤浪晋太郎(阪神)とともに春夏連覇も達成している。4年後にまさか8位という下位で指名されるとは思わなかっただろう。
一方、地方の大学勢は、3位以下で10名いる。
床田寛樹(箕面学園→中部学院大→広島3位・投手)、高良一輝(興南高→九州産業大→日本ハム3位・投手)、笠原祥太郎(新津高→新潟医療福祉大→中日4位・投手)、中尾輝(杜若高→名古屋経済大→ヤクルト4位・投手)、菅原秀(福井工大福井高→大阪体育大→楽天4位・投手)、鶴田圭祐(藤井学園寒川高→帝京大準硬式→楽天6位・投手)、丸山泰資(東邦高→東海大→中日6位・投手)、尾仲祐哉(高稜→広島経済大→DeNA6位・投手)、狩野行寿(川越工→平成国際大→DeNA7位・内野手)、長坂拳弥(健大高崎高→東北福祉大→阪神7位・捕手)らが指名されている。
この10名のうち、高校時代有名だったのは菅原、長坂の2人だけだ。
六大学各校は授業優先、全体練習削減を進めている。
この顔触れを見て考えさせられるのは、六大&東都勢の大学での伸び悩みだ。
澤田は高校時代の知名度と大学通算22勝の実績を見ればドラフト上位で指名されてもおかしくない。
プロ志望届を提出した佐藤拓也(浦和学院→立教大・外野手)、金子凌也(日大三高→法政大・内野手)、竹内諒(松阪高→早稲田大・投手)の3人は甲子園を経験している元有名球児で、金子は夏の選手権を制した日大三高の優勝メンバーだが名前を呼ばれなかった。
「学生の本分は勉学」を合言葉に、東京六大学各校は授業優先、全体練習の削減を進めてきた。それでいて最も優秀な高校球児を獲得しているのも東京六大学各校である。
「大学の4年間は自分の生きる道を探す4年間」というのが私の認識だが、元有名球児は「自分の生きる道の模索」を有名大学入学でほとんど果たしてしまっているようだ。
東都勢は強烈な東京六大学リーグへの対抗心から依然として強豪リーグの名をほしいままにしているが、今年のドラフトではプロ志望届を提出した久保田昌也(龍谷大平安高→国学院大・外野手)、松田進(国学院久我山高→中央大・遊撃手)、法兼駿(高知高→亜細亜大・二塁手)が指名から漏れている。
授業優先の波はここにも及んでいる。