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ドラフトは六大・東都より地方大学?
上位24人中10人指名から見えるもの。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/10/30 11:00

ドラフトは六大・東都より地方大学?上位24人中10人指名から見えるもの。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

5球団競合でソフトバンクが指名権を得た田中。高校時代は本人もこれほどまでの注目株になるとは思っていなかったはずだ。

横浜市長杯で佐々木vs.田中の勝負が見られるはず。

 このような現象から、昨今、私は地方大学リーグによく足を運ぶようになった。

 球場にいるのは関係者が多く、一般のファンはパラパラ、というのはどの地方リーグにも共通している。だが、近年はプロ野球のスカウトの数が急激に増えていると感じる。それはそうだろう――今ドラフトではドラフト1、2位の中に10人の地方リーグ在籍選手がいるのだから。

 秋のリーグ戦は東京六大学リーグの早慶戦以外は、今後は11月11日から始まる明治神宮大会と、その出場権をめぐる関東5連盟(関甲新大学、千葉県大学、東京新大学、首都大学、神奈川大学)の戦い、横浜市長杯(明治神宮大会出場決定戦)などを残すのみである。横浜市長杯にはドラフト上位指名された白鴎大、桜美林大、創価大、神奈川大が出場し、1回戦で桜美林大対創価大という屈指の好試合が組まれている。

 佐々木と田中の先発はほぼ間違いなく、展開によっては池田隆英のピッチングも見られるかもしれない。

 白鴎大と創価大、桜美林大が勝ち進めば準決勝で中塚駿太と田中か佐々木の投手戦が見られそうだし、神奈川大と東海大が勝ち進めば準決勝で濱口遥大と丸山泰資の対決も見ものである。選手同士だけではない。東海大と1回戦で対戦する国際武道大は東海大の系列校なので姉妹校対決になる。

 これまで横浜スタジアムの収容力に見合わない観客しかやってこなかったが、今年は観客を動員する要素が山盛りとなっているのだ。

社会人経由での六大出身者には、何かホッとする。

 本番の明治神宮大会には小野泰己(富士大)、水野滉也(東海大北海道キャンパス)の出場が決まっている。大学野球の牽引車、東京六大学リーグからは、柳裕也(中日1位)、星知弥(ヤクルト2位)、佐野恵太(DeNA9位)を擁する明治大が、東都大学リーグからは京田陽太(中日2位)が率いる日本大が秋のナンバーワンをめざして腕をぶしている。

 大学球界には地方の風がびゅんびゅん音を立てて吹きわたっているが、名門校には盟主としての意地があるはず。

 過去3年間は亜細亜大、駒沢大、亜細亜大と東都大学リーグ勢が3連覇を果たし、東京六大学リーグ勢は2010、2011年の早稲田大、明治大以降、優勝していない。第3の勢力「地方勢」は2012年の桐蔭横浜大以来の頂点をめざす。

 今ドラフトで、東京六大学リーグ経由で社会人野球に進んで頑張っていた糸原健斗(開星高→明治大→JX-ENEOS→阪神5位・内野手)と高梨雄平(川越東高→早稲田大→JX-ENEOS→楽天9位・投手)の名前を見つけた。

 何かホッとした。

 東京六大学リーグには厳しい原稿になってしまったが、野球で身を立てるという考え方は、今のような時代でも依然として健全だと思うからだ。

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