濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
未知の強豪が一堂に会した『巌流島』。
スポーツに背を向ける“実戦”の魅力。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2016/10/28 11:00
『ドラゴンボール』の“天下一武道会”、『燃えよドラゴン』の“武術トーナメント”……誰しもが一度は夢想する究極の戦いの片鱗が『巌流島』にはある。
ゲームや漫画の戦いが『巌流島』にはある。
一回戦では押し出しによる「転落」でポイントを重ね、相手が前に出るしかない状況に追い込んだ上でカウンターのパンチを決め、KOしている。決勝戦では蹴りを使って小見川に得意のパンチを使わせず、ボディに爪先をめり込ませて2ラウンドでノックアウト。まさに沖縄拳法空手vs.柔道の他流試合だった。
「(巌流島のルールの中で)どうやって闘おうか、と考えるところから楽しかった」と小見川。菊野は「こんなストIIみたいな、(グラップラー)刃牙みたいな舞台で闘えるなんて幸せです」と言った。MMAの経験が豊富な2人だからこそ、MMAとは違う闘いができたのかもしれない。少なくとも、菊野と小見川は他の選手以上に“巌流島で闘う意味”を考えていたのではないか。
そういう意味では「結局は人」ということになる。
どんなルールであれ、選手の意識の持ち方で試合の面白さは変わってくる、ということだ。しかし『巌流島』に関しては、そうした選手の意識を刺激するルールだったとも言えるわけで――。
100人に100通りの見方がある。それが『巌流島』だということだろう。そして、ツッコミも含めて何か語りたくなるのが『巌流島』なのだ。