濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
未知の強豪が一堂に会した『巌流島』。
スポーツに背を向ける“実戦”の魅力。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2016/10/28 11:00
『ドラゴンボール』の“天下一武道会”、『燃えよドラゴン』の“武術トーナメント”……誰しもが一度は夢想する究極の戦いの片鱗が『巌流島』にはある。
『全アジア武術大会』にイタリア代表……。
昨年から“公開検証”イベントを行なってきた『巌流島』。10月21日、国立代々木競技場第二体育館での大会は『全アジア武術選手権大会2016 in TOKYO』として開催された。
いきなりスケールがデカい。
本当かそれは?
アジア最強の武術家が決まるのかこれで?
中継用のトークで、谷川氏は「武術の源流をたどると、すべてアジアに行き着くんですよ」と胸を張っていたが、それは「格闘技の中でアジア発祥のものを主に武術と呼ぶこともある」ということじゃないのか。
そんなわけでルールにしても運営、演出にしてもツッコミどころはたくさんある『巌流島』だが、それでも気になるのは、たとえば60歳の“達人”が若い選手に混じって出てきたり、イタリアから「喧嘩フットボール」(相手チームの選手を殴り倒してもOK)の選手を発掘してきたりするからだ。
「相撲と柔道どっちが強い?」的な発想。未知の格闘技に謎のファイター。まあ雑といえば雑だけれども、一般ウケしそうな“コンテンツ”としての可能性は大いにある。
10.21全アジア武術選手権トーナメントには、イランのカンフートーア代表、モンゴル相撲代表といった面々が出場(インドのコシティ代表は後に参加)。さらにMMAでも名を知られた菊野克紀が沖縄拳法空手代表、小見川道大が柔道代表として参戦してきた。
MMAとはひと味違う、他流試合の醍醐味が。
結果からいうと、決勝に進出したのは、この菊野と小見川だった。
結局、MMAで実績のある選手が強いってことか。
そういうふうにも思える。
いや実際、出場したほとんどの選手がキックボクシングや柔術、MMAの練習もしているような試合ぶりだった。「あのモンゴル相撲の選手、いいパンチ持ってるな」という感じで、現代における他流試合はやはり総合力の勝負になってくるのだろう。そこは『巌流島』にとって悩ましいところだ。
ただ決勝戦、菊野と小見川の闘いに関しては、『巌流島』でしか見られない、『巌流島』の醍醐味を体現するものだった。1ラウンドは小見川が柔道で圧倒する。道着の襟を掴んで振り回し、巴投げで場外に「転落」させる。
試合後の菊野は言った。
「あそこが崖だったら、僕は死んでたことになります」
そういう発想ができるから、菊野は『巌流島』に向いているとも言える。