炎の一筆入魂BACK NUMBER
セ界王者のカープがCSで横綱相撲。
背景には黒田、コーチらの意識改革が。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2016/10/14 12:30
CSで2連勝を飾り、日本シリーズに王手をかけた広島ナイン。好不調の波にかかわらず勝ちをもぎ取る理想的な“広島野球”を展開している。
黒田が若手投手にかけた言葉で、覚醒。
黒田が広島の若手投手に言った。
「プロの世界はやるか、やられるか。気持ちで負けたら絶対にやられる」
内角へ思い切って投げ込もうとする若手の背中を強く押す言葉だった。視点が変われば、投球も変わる。黒田の言葉で野村の視界が変わった。
攻撃陣にも言える。
リーグ5位のチーム打率に終わった昨季、得点機での1本が出ず勝負弱いイメージが強かった。だが、石井琢朗、東出輝裕、迎祐一郎、3人の打撃コーチが選手の視点を変えた。
CS初戦。
広島は1回、2回といずれも先頭打者を出し、得点圏に走者を進めながら得点を奪えないでいた。しかし、チャンスすら作れないDeNAとは対照的だった。
短期決戦で流れをつかめなければ、相手に流れを渡してしまうこともある。昨季までの広島であれば「好機逸脱」の空気が漂っていたかもしれない。だが、広島ベンチに重苦しい空気はなかった。3回1死二塁から先制打を放った丸はナインの思いを代弁する。
「点は取れていませんでしたけど、たくさんチャンスは作れていたので。今年はとにかくチャンスを作ろうとチームでやってきた。それができていたので、嫌な空気はありませんでした」
無安打での得点がDeNAに深いダメージを与えた。
得点機でいかに打つかではなく、いかに得点機を多く作るか。
「好機逸脱」ではなく「好機演出」。
好機の数を増やせれば、自ずと得点力は上がる。発想の転換で、各選手の重圧は軽減された。それは同時につなぐ意識の徹底と向上にもつながった。好機演出は誰か1人でできるものではない。試合を重ねるごとに広島打線は太い線となった。
真価が問われるCSで、初戦は本塁打なく5得点。2戦目は4安打で3得点という効率のいい攻撃を見せた。
特に3回は、四球、暴投、犠打、犠飛で追加点を奪った。無安打での得点が、DeNAに深いダメージを与えた。