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カープを優勝に導いた「我慢の男」。
菊池涼介は……弱みを見せなかった。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/09/24 11:30
フェンス激突後、担架を拒否してベンチへ戻る菊池。3年連続ゴールデングラブ賞の二塁守備はもちろんのこと、今季は打席でも打率3割超と頼もしい。
石井コーチ「キクが一番我慢しているはず」
優勝目前のそんなシーンに象徴されるように、今季のカープにおける菊池の粉骨砕身ぶりは際立っていた。
石井琢朗打撃コーチも「キクが一番我慢しているはず」と、自己犠牲に徹した2番打者を評価する。「ベンチが求めている部分もあるし、自主的にやっている部分もある。キャンプ中から一番のキーマンだと思って『お前次第だよ』と言ってきました」。チームでも数少ない日本一の経験を持つコーチは、攻撃面での菊池の重要性を見抜いていた。
犠打数だけでなく安打数でもリーグトップを走る菊池だが、自己評価の基準も一貫している。
「ヒット数についてはまったく気にしていないんで。ただキャンプからずっとやってきた右方向に打つという意識が、たまたま抜けてヒットになったりしているだけ。他のプレーではどうかわからないけれど、ランナーを進めるという2番打者の役割に関してはチームに貢献できたと言えると思います」
菊池、丸、田中、野村……らはすべて1989年生まれ。
右膝負傷の翌々日、カープは東京ドームで悲願の優勝を遂げる。
黒田博樹と新井貴浩の両ベテランが抱き合う後ろで、「我慢の男」菊池の目にも大粒の涙が光っていた。
このカープ優勝において、精神的に黒田と新井という投打の両ベテランが果たした役割は大きい。そしてその背中を見ながら、20代後半の中堅選手たちが実働の面でチームを牽引した。
菊池と丸、そして1番・遊撃手として全試合に出場する田中広輔、ハーラートップの15勝を挙げている野村祐輔は、そろって1989年度生まれの同学年だった――。