ニッポン野球音頭BACK NUMBER
DeNAがついに越えたCSの「Line」。
ラミレス監督の芯を見た言葉の数々。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/09/25 07:00
現役時代は明るいキャラクターのイメージだったラミレス監督だが、就任1年目にして指揮官の貫録と風格を漂わせている。
毎回のように言った「Tomorrow is Another Day」。
就任1年目のスローガンは、自身が考案した「WE PLAY TO WIN」。平易な単語を4つ並べた一文で、勝利への強い意識をチームに浸透させた。ここ数年、横浜スタジアムの観客動員数は飛躍的に伸び、それとともに「あとは勝つだけ」という言葉が球団内からも、ファンからも、ことあるごとに出るようになっていた。そうした思いを真正面から受け止めるようなスローガンでもあった。
だが掲げた言葉とは裏腹に、序盤戦は苦しんだ。指揮官は欠かさず行う試合後の囲み取材で、「Tomorrow is Another Day」と毎回のように言った。当初は、負けた悔しさを引きずらず気持ちを切り替えるためにそう言っているのかと思っていたが、やがて、勝っても同じことを言い続けていることに気づかされた。
勝っておごらず、負けてうつむかず。「明日は明日」の一言には、いいことも悪いことも、過去のすべてを一度分断し、明日への準備に意識を傾けさせる不思議な力が宿っているようだった。
主将・筒香の思考法ともぴたりと合致した。
それは主将である筒香嘉智の思考法ともぴたりと合致する。筒香は試合に向けての準備について、こんなふうに話していたことがある。
「気持ちを切り替えるというよりも、試合が終わったら、もう次の日に対しての準備が始まる。うまくいったこと、うまくいかなかったこと。ただその2つだけをきっちり頭の中に置いて、明日の準備に入る。だから負けてどうとか、打てなくてどう、ということはまったく考えないですね」
季節が進み、徐々にチーム状態が上がっていくと、ラミレスはポジティブな言葉を連呼して選手たちの背中を押した。「監督も常々『目の前の試合を1つずつ勝っていこう』と言っていますから」などと、ミーティングなどでのラミレスの言葉を引用する選手が多くなっていった。
シーズン中に絶不調に陥った山崎康晃とロペスを我慢強く起用したのも、2人の心にポジティブの灯りが消えていないのを見抜いたからだった。ラミレスは言う。
「彼ら自身が苦悩している時でも下を向かず、一生懸命プレーし続けてくれた。だから必ずまた(調子が)戻ってきてくれると信じ続けることができた。そこが我慢することができた“ライン”だったのではないかと思う」