ニッポン野球音頭BACK NUMBER
DeNAがついに越えたCSの「Line」。
ラミレス監督の芯を見た言葉の数々。
posted2016/09/25 07:00
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Naoya Sanuki
9月19日、横浜DeNAベイスターズが球団史上初のクライマックスシリーズ(CS)進出を決めた。
Aクラス入りといえば聞こえはいいが、「6チーム中3位になっただけ」という冷めた見方があるのも事実だ。それでも、ベイスターズの歩んできた過去を思えば、球団やファンが感慨にふけるのは当然のことだろう。
21世紀のベイスターズは、昨季までの15年間で853勝1236敗。積み重ねた借金は383(年平均25以上)に上る。DeNAが親会社になった初年度の2012年も46勝85敗、勝率.351という厳しい船出だった。
札束を積んでFA補強に打って出たわけではない。外国人選手の獲得には積極的だったが、チーム状況を激変させるほどのインパクトがあったわけでもなかった。戦力、選手層に大きな変化がない中でこれまで以上の結果を出したとすれば、やはり就任1年目のアレックス・ラミレス監督の功績は決して小さくないはずだ。
選手がミスをしたとしても「That happens」。
ラミレス監督の特徴の一つは、謙虚であることだと感じる。
試合に敗れた時、選手がミスをした時、しばしばこう口にするのを耳にした。
「That happens.(そういうこともある)」
言い訳をせず、淡々と現実に向き合う姿勢が印象的だった。
自身の采配を「ミスをおかして負けた試合もある」と率直に認め、借金が最大11にまで膨れあがった序盤戦については「若い選手を正しく使うことができなかった」と振り返る。もっともらしい理屈を並べて責任を回避するのではなく、「そこから学んでいこう」とポジティブな姿勢を貫いた。
徹底した分析と、そこから導き出されるデータが軌道修正のベースとなった。時にファンから批判を浴びるほどに不調の選手を使い続け、結果的に復調を果たして我慢が報われた。そうした選手への信頼やデータ主義はたしかに実を結んだが、何より選手たちを変え、チームの空気を変えたのはラミレスの発し続ける言葉だったのではないだろうか。