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松山英樹が求める「止まる」ボール。
クラブやスイングを変えた背景とは。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byAFLO

posted2016/09/21 07:00

松山英樹が求める「止まる」ボール。クラブやスイングを変えた背景とは。<Number Web> photograph by AFLO

松山英樹のショット貢献度はすでに世界屈指である。それでも、新技術を取り入れない選手に成長はない。

既に世界最高レベルのアイアンを、大改造。

 いまだかつてないほどに痛感した失望の連続。今季それを生んだのは何だったのだろう。

 思うような結果に恵まれず、ストレスに満ちた時期を本人はこう述懐した。

「クラブとスイングを一気に変えすぎた。それを同時にやったのが良くなかった」

 マスターズを終えたあと、松山は数多くのクラブを実戦でテストした。特にウッドは、1Wをはじめ複数のクラブを試した。5月のプレーヤーズでは、パターを定番のピンタイプから大型ヘッドタイプにスイッチした。そのパターに差した太くて四角いグリップは、前の試合のロッカールームでたまたま見つけたモデル。他選手がチャリティ用に寄付していた古いものを何気なく握って気に入り、すぐにメーカー担当者に発注をお願いしたものだった。

 クラブの中でも生命線といえるアイアンセットを総入れ替えしたことも、ひとつのトピックスだった。

 松山のアイアンゲームは既に世界最高のレベルにある。ツアーが集計したデータでは、セカンドショット以降の部門別スタッツは常に全体の上位を記録する。今季新たに採用された「Strokes Gained: Approach-the-Green」というスタッツは「パー3の第1打、パー4&パー5の第2打の結果」がスコアにどれだけ影響を及ぼしているかという指標で、松山はこの部門で最終戦を前に全体2位につけている。

グリーン上でボールを「止める」ことへの劣等感。

 しかしそういった数字とは異なる視点で、彼には米ツアー参戦以来常に求め続けてきたある要素が存在する。それが、ボールをグリーンで「止める」技術。グリーン上での転がりを抑えるだけの「高さ」と「スピン量」を伴ったボールである。その探求は3シーズン目にして、大きな進歩を感じさせるものになっていた。

 ずっと最も近くで、ロープの中の様子をつぶさに目にしてきた進藤大典キャディは、松山の変化を次のように語る。もちろん彼は、松山がボールを止めるべく努力してきたことを知っている。

「こっちに来た2013年、シーズンが開幕して何試合か出た段階でそう思うようになったんです。有名な選手でなくとも、英樹よりもボールが止まる選手が結構いた。ボールが止まらないイコール、スピン量が少ない。ただその分、英樹のボールは風が強い時にメリットがあるんですけどね。アゲンストの風が吹くホールで、ほかの選手が長いクラブを持たなくちゃいけないとき、英樹は普段通りの番手を持てたりする」

【次ページ】 今年のマスターズで見られた「止まり」の変化。

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