ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
松山英樹が求める「止まる」ボール。
クラブやスイングを変えた背景とは。
posted2016/09/21 07:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
AFLO
熱気であふれかえるトーナメントの開幕前。人もまばらな練習ラウンドの風景を、松山英樹は両腕を前に後ろにと大きく動かしながら、グリーンに続く花道を歩いていた。
大手を振って、とか、肩で風を切って、という表現は当てはまらない。「ヒデキ、どうした?」。チームスタッフの呼びかけに、松山は溜め息交じりに言った。
「こうやって歩けば、元気がでるんじゃないかなぁと思って……」
わざとらしくても上半身を激しく動かすことで、足取りを少しでも軽くさせようとしていたのだ。
悩みは今日も尽きない。昨年秋にスタートしたレギュラーシーズンを終え、8月下旬に突入したプレーオフシリーズ。長い1年が幕を閉じようとしたいまでさえ、彼は模索の日々を送っていた。
数字の上では、実はベストシーズン。
松山にとって、米ツアー本格参戦3季目となった2015-16年シーズン。2月にウェイストマネジメント・フェニックスオープンで待望の通算2勝目を飾り、4月のメジャー初戦マスターズで7位。7月の同最終戦・全米プロゴルフ選手権でも4位と堂々の成績を残した。
ポイントランキング上位30人が出場するプレーオフ最終戦・ツアー選手権に3年連続で出場し、獲得賞金はその最終戦を残した段階で、過去最高の385万3954ドルに達した。
数字上では、ベストシーズンという見方が十分できる。だが一方で、出場試合が3季で最も少ない23試合(最終戦を含む)にもかかわらず、予選落ちが最多の5回あった。
とくに6月初旬からの1カ月半は、4試合中3試合で決勝ラウンドに進めなかった。そのうちメジャーが2回。全米オープン、全英オープンと初めてメジャーで連続予選落ちを喫した。
「いい状態で入ったつもりが、試合になったら、コースに出たら全然ダメで」と振り返る。試合前の本人の感触と結果、好不調の波……それぞれに格差の存在したシーズンでもあった。