プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“野手脳”高橋由伸監督に、
巨人・堤辰佳GMから愛の手を!!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/09/10 11:00
9月上旬の連敗時には「何を変えたら勝てるとかそういう問題じゃない。今まで通りやること」とコメントしていた高橋監督。そのブレない信念は本物だ。
巨人マイコラスと広島ジョンソン、どう攻略されたか?
首位・広島を8ゲーム差で追いかけた3連戦の初戦。巨人はマイルズ・マイコラス投手、広島はクリス・ジョンソン投手と、ともにポンポンとストライクを先行させるピッチングスタイルの投手の先発だった。
ただ、この日のマイコラスはやや制球が悪い上に、広島打線も粘っこく食らいついた。5回には8番の石原慶幸捕手が11球粘るなど、この回だけで打者5人で26球、6回も打者3人で終わったものの、結果的には18球を消費させている。その結果、マイコラスは7回を無失点で抑えたが111球を投げて8回には2番手のスコット・マシソン投手にマウンドを譲っている。
広島のジョンソンは淡々と巨人打線を打ち取って9回もマウンドに上がった。この回1死満塁のピンチを招き22球を費やしたが、それでもここを切り抜けて121球で降板した。ジョンソンに対して巨人打線は32打者で、6球以上粘った打者は7人だけだった。
試合は結果的には両軍無得点のままに延長戦に突入して、10回に巨人が脇谷亮太内野手の本塁打でサヨナラ勝ちしている。どちらに転んでもおかしくない試合展開を振り返った高橋監督が、ジョンソン攻略に「序盤からもっと球数を投げさせるとか……」と質問された答えが前述のものというわけだ。
投手・捕手脳と野手脳のどちらかが正しい、ではない。
球数を投げさせるために例えば球種、コースを細かく絞ってそれ以外はファーストストライクを捨てて待球していく。どんどんストライクを先行させて投げ込んでくる投手相手だと、それはかえって相手のペースにはまるだけとなるケースもある。好投手になればなるほど、失投は少ない。ならばその失投を逃さず打つ積極性こそ打者に求められる姿勢だという考えだ。
投手脳、捕手脳が相手をトータルでどう攻略するか――打ち崩せないなら、早い回に交代させることも想定する――と考えるなら、野手脳はあくまで相手をどう打ち崩すかということに集中するのである。
断っておくが、どちらが正しくて、どちらが間違っているということではない。
チームの戦力やその時々の状況によって評価は分かれるはずだ。投手脳、捕手脳はよく言えば攻守に手堅く、悪く言えば消極的采配に陥りやすい傾向がある。野手脳は冒険的で不確定要素を孕んだ采配になりかねないが、選手の能力を引き出す点では優位性がある。