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竹下佳江が語る五輪バレーの敗因。
またプレーしたくは、「なりません」。 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byJMPA

posted2016/09/08 11:00

竹下佳江が語る五輪バレーの敗因。またプレーしたくは、「なりません」。<Number Web> photograph by JMPA

21歳にしてセッターという重責を担った宮下遥。竹下がロンドン五輪で銅メダルを獲得したのは34歳の時、まだまだ時間はある。

ミドルにトスが上がらなかった要因は?

 ここからは元司令塔の目から見たセッターについての見解を聞く。リオ五輪では、五輪初出場の21歳(大会時)、宮下遥が正セッターを務めた。

「大会を通して、評論家の人たちに『ミドルブロッカーが使えない』とか、『あの時はあそこに上げるべきだった』というふうにいろいろなことを言われていましたが、期間中は選手が一番デリケートな時期なので、かわいそうだなと思うこともありました。私が現役だったら相当嫌だったと思います。でももう大会は終わったので、今は何でも言えます。

 ミドルを使うことに関しては、使おうと思った時にサーブレシーブが返らなかったり、セッターもモヤモヤしていたでしょうし、みんなモヤモヤしていたと思う。たぶんベンチからも、『今ミドルを使っても大丈夫だよ。ここスペース空いてるよ』といった指示は出ていたはずなんです。それでも使えなかった、使う勇気がなかったということは、やっぱりそこの信頼関係がまだ成り立っていなかったのかなと感じました。遥とミドルがどれだけ練習でコンビをつめて、お互いの信頼関係を築いてこられたのかなというのは、ちょっと疑問です。

 (結婚、出産で)代表を離れていた絵里香が合流して半年もない間にチームを仕上げるというのは酷でしたね。セッターにそのスパイカーを使えと言っても、信頼関係が何ヶ月間かでできるかといったら、そんな簡単なものじゃない。遥たちセッターは頑張ったし、絵里香もブロックですごくチームに貢献しました。絵里香もたぶんいっぱいいっぱいだったと思います。今年合流して、チームの中に入っていかなきゃいけない。沙織のバックアップもしないといけない。ブロックを期待されているし、自分の家庭のこともある。コンビもつめなきゃいけない。絵里香自身も、『甘くなかったな』というふうに感じているんじゃないでしょうか」

「遥は、人をいかすことがまだうまくないのかな」

 信頼関係と言えば、今年5月のリオ五輪世界最終予選では、エースの木村とセッター宮下の信頼関係が高まり、木村が爆発力を発揮した。ただ、リオ五輪では木村が乗り切れなかった。

「私が現役でやっていた時は、やはりここぞという時には沙織に上げていたし、『決めてくれる』という信頼感があった。沙織も『絶対答える』という思いでいてくれた。そういうものを作り上げるには、今のチームにはちょっと時間が足りなかったのかなと思うし、遥は、選択のしかたというか、人をいかすことがまだうまくないのかなと思います。『この場面でここに上げなかったら、またこの選手の気持ちがなえちゃうよ』とか、『ここで使ってあげたら、この子はもっと上がっていくよ』と感じることは多かったです。

 信頼関係というのは双方向でなくちゃいけない。セッターからスパイカーへの信頼感だけじゃなく、セッターはスパイカーからの信頼を得なくては、チームとして成り立ちません。スパイカーが『あ、ここで上げてくれるんだ』と意気に感じることが、スパイカーからの信頼度につながるんですが、そういう意味では難しかったのかなと。スパイカーの心を汲み取ってあげないと信頼関係は生まれないのですが、まだ自分の意志が先にきていることがあります。そこは経験を積んでいってほしいなと思います。

 私も若いときはそんな余裕はなくて、とにかく勝たなきゃいけないとか、1点1点を取ることに必死でした。でもだんだんと年齢が上になるにつれて経験値が増えて、余裕もできて、ちょっとずつ変わっていけた気がします。

 自分が自分が、となりすぎているスパイカーがいても、『今はちょっと我慢してね』と違うところにトスを回すことができるし、それでその子がふてくされても、『まあ勝手にしといて』と思える。それも自分の年齢が上にいったからできたことだと思うし、そういう人を抑える力も出てくる。経験値や、年齢とともに生まれる余裕ってやっぱり大きいなと思いますね」

【次ページ】 「日本のレベルはちょっとずつ下がっている」

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