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リオでの敗退劇から考える4年後――。
東京世代に“トルシエ式”の採用を!
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO
posted2016/08/31 17:00
数々の衝突はあったが、トルシエ監督は小野伸二ら若い世代を引き上げ、さらに結果を残したのも確かである。
今でも語り草の“黄金世代”ブルキナファソ遠征。
だが、その次のチームである現在のU-17世代、さらに東京五輪のチームにはより時間と強化費用をかけて強化をしていくべきだ。Jリーグでの試合経験を考えることも重要だが、それよりも海外遠征に頻繁に出ていったほうがはるかに強化に繋がるはずだ。
欧州だけではなく、中南米、アフリカ、中央ロシアなど行くべきところはいくらでもある。
例えば、環境的に過酷な海外遠征に出て、メンタル的なタフさを育成するのも大事なはず。1999年のナイジェリアでのワールドユース(現U-20W杯)の大会前、チームはトルシエ監督に率いられてアフリカのブルキナファソ遠征を行なった。ホテルのシャワーは湯が出ず、茶色の水しか出ない。便器が壊れて座れない。ベッドのシーツは砂まみれ。劣悪のピッチで完全アウェイという環境で戦い、彼らはどんな状況でも動じないメンタルを育んでいったのだ。
こうした経験がナイジェリアWユース準優勝という結果を生んだひとつの要因となった。2020年の東京五輪では、リオ五輪のチームを成長させた最終予選というステップがない。だからこそ、恵まれた環境ではなく、あえて劣悪で相手に与えられた環境で戦って勝つ強さを身に付ける必要があるのではないか。日本人選手にとって快適な環境を与えるだけが、選手・チームの強化ではないはずだ。
A代表監督、コーチングスタッフは五輪兼任がベスト。
強化の一環で言えば、A代表監督が東京五輪監督を兼任し、トレーナーなどのコーチングスタッフもA代表と同じレベルで揃えるべきだ。
A代表の監督がU-20、U-23代表を兼任するメリットは非常に大きい。シドニー五輪以降、A代表監督の目指すサッカーと五輪代表監督が目指すサッカーはほぼ別物だった。そのため五輪で活躍してA代表に一時的に呼ばれても定着するまでに非常に時間がかかっている。
実際、ロンドン五輪ではベスト4という結果を出し、その後、すぐにW杯アジア最終予選で清武弘嗣、山口蛍、鈴木大輔ら5名もの選手が招集された。しかし当時のアルベルト・ザッケローニ監督のもとで完成したチームに入っていく難しさ、そして戦術習得に時間がかかり、彼らが本当の意味でA代表入りを果たしたのは、その1年後、東アジア杯で結果を出してからだった。また、A代表監督が世界を知る指揮官であれば、そこから学び、意識を高めることもできる。