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悔し涙だけは、もう、こぼさない。
浅野拓磨が目指す「ケロっと」精神。
posted2016/08/29 11:00
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
JMPA
次はもう泣きません、と浅野拓磨は笑った。
9月1日、6日に行われるワールドカップアジア最終予選のメンバーに、リオ五輪代表の浅野が選出された。手倉森誠監督のもとで戦った23歳以下の世代からは、彼と大島僚太がピックアップされている。
抜擢ではない。驚きではない。彼ら2人は、6月のキリンカップにも招集されている。浅野は6月3日のブルガリア戦で代表初ゴールをマークし、7日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦では初先発でフル出場している。
リオ五輪を終えた浅野は、「年代別の代表はもう終わったので、代表でプレーするとしたらフル代表しかない。常にそこへ入れるように、自分のチームで今までどおりアピールしていきたい」と話した。
「自分のチーム」が新天地のアーセナルになるのか、それとも期限付き移籍先になるのかは分からなくても、「与えられた環境で100パーセントのプレーをするだけです」と、いつもどおりのスタンスを保っていた。ブラジルから帰国後は東京に滞在し、日本代表のスタッフのサポートも受けてトレーニングを積んだ。
浅野は「有望枠」ではなく「信頼する戦力枠」。
日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、「ブラジルから一度日本へ帰国したあとロンドンへ行ったという話は聞いているが、コミュニケーションを取るのが難しい状況にあるので、ワールドカップ予選の1試合目に使えるかどうかはまだ分からない」と、表情を曇らせる。それでも、「浅野をとても信頼している。五輪でも高いクオリティを見せた。競争には彼も含まれている」と続けた。
「最終予選でリスクは取れない」と話す指揮官は、経験と実績を持つ選手で24人のメンバーを編成した。35歳の中村憲剛がバックアップとして構想に入っていると明かしたのも、テスト的要素が選考に入り込む余地はないという宣言に他ならない。「若手の有望株」といった認識が広がる21歳のスピードスターは、UAEとタイを破るために必要なアタッカーなのである。