話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
五輪までにU-23に必要な3つのこと。
全てのカギは、遠藤航が握っている。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO
posted2016/07/29 11:30
遠藤航に触れる機会があった人は、皆その大人びた雰囲気と発想に驚く。彼がチームに落ち着きをもたらすに違いない。
ブラジルW杯の失敗を知るスタッフが心強い。
3つめは、コンディションだ。これはある意味で、戦術以上に重要になる。南アフリカW杯では完璧な高地対策と疲労を科学的に分析し、コンディションを徹底管理してベスト16という結果を出した。
ロンドン五輪では英国中部のバッキントンで合宿し、スペインと戦うグラスゴーに近い環境で体を慣らしてコンディションを整えた。スペイン戦では1分も落ちることなく、全員が動き回り、コンディション調整が完璧だったことをアピールした。
逆にブラジルW杯では、事前合宿の指宿でハードにトレーニングをし過ぎて、アメリカでは暑熱対策に失敗。しかも拠点のイトゥは涼しく、初戦コートジボワールの対戦地である高温多湿のレシフェとまったく異なる環境だった。コンディション作りや合宿場所の選定で失敗し、それが結果に大きく影響してしまったのだ。
今回の代表には、早川直樹コンディショニングコーチがついている。ザック時代の“失敗”を肌で感じているだけに、同じ轍は踏まないと、選手のコンディション調整には人一倍気を使っているだろう。
それでも、アテネ五輪の最終予選UAEラウンドでは、原因不明の食中毒で選手が下痢に苦しんだ例もある。不測の事態のリスクをできるだけ下げ、完璧なコンディションでピッチに立てれば、ナイジェリア戦の勝利はそれほど難しいミッションにはならないはずだ。
リオ五輪のチームは、クラブのような人間関係。
初戦を前にすべきことを3点挙げたが、実は今回のチームには大きなアドバンテージがある。選手同士が仲が良く、まとまっており、まるでクラブチームのようだということだ。
19日、チームは海外組以外の選手とOA枠の興梠慎三、塩谷司、藤春廣輝が初めて合流した。普通は微妙な空気が流れたりするものだが、遠藤航が「特別な感じはしないっすね」というように、クラブチームで毎日、会って挨拶するような雰囲気だったという。
人間関係は、まさにクラブだ。OA以外の選手はお互いのこと(プレー、性格など)をよく理解できているので、プレーにおける齟齬がほとんどない。オートマティックに動けるし、連係面もスムーズだ。代表は練習時間が少ないので連係面での課題がクローズアップされることが多いが、このチームにはそれがあまり当てはまらないのだ。
思い起こせば、クラブのような雰囲気を持っていた代表チームが過去にもあった。アトランタ五輪だ。前園真聖、中田英寿、川口能活、松田直樹ら、選手はみな非常に個性が強く、自己主張も強かった。だが見た目とは裏腹に、「世界を驚かす」という一点で非常にまとまっていて、一体感があった。それが圧倒的な劣勢の中でも体を張って1点を守り抜く姿勢につながり、「マイアミの奇跡」を起こしたのだ。