岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER

五輪で7人制ラグビーを楽しむために。
岩渕健輔がその魅力と特異性を解説! 

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岩渕健輔

岩渕健輔Kensuke Iwabuchi

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posted2016/07/27 17:00

五輪で7人制ラグビーを楽しむために。岩渕健輔がその魅力と特異性を解説!<Number Web> photograph by AFLO

広いコートを7人でカバーするセブンズは、求められる能力が違う。15人制のスピードスターですら選考から外れる厳しい世界なのだ。

春の3つの大会は、すべて優勝国が違う事態に。

 これを後押しするのが、波乱や番狂わせが起きやすいという特徴です。

 事実、男子の7人制に関して言えば、毎年行われている「ワールドラグビーセブンズシリーズ」(世界10都市でそれぞれ2日間ずつの大会を開催し、シリーズの総合優勝を決める国際大会では、4月のシンガポール大会はケニア、5月のフランス大会はサモア、イングランド大会はスコットランドがそれぞれ優勝を収めました。

 これら3カ国はいずれも地力がありますが、実力的には日本と大差のないチームばかりです。にもかかわらず各大会で優勝を収めることができました。試合時間が短く、かつ大会自体が短期間で決着するため、うまく勢いに乗ることができたチームは、一気に頂点まで上り詰めるケースが増えてくるのです。

ニュージーランドが7人制では勝てない理由。

 ただし、7人制の試合ではトリッキーな要素ばかりが大きいわけではありません。むしろ実際には、世界のラグビー界では逆の現象が起きています。7人制という競技の成熟度自体が、急激に上がってきているのです。

「ワールドラグビーセブンズシリーズ」で優勝したケニア、スコットランド、サモアといったチームには1つの共通点がありました。選手を1カ所に集め、年間を通して継続的に鍛え上げるという、タスクフォース型の強化を実施してきた点です。

 15人制のラグビーでは圧倒的な強さを誇るニュージーランドが、7人制ではそれほどのアドバンテージを確保できなくなっている理由も、まさにここにあります。

 ニュージーランドは選手の個々の能力が高いため、国内の幾つかの拠点でそれぞれ合宿などを組む分散型の代表強化を行ってきました。以前はこのような方法でも7人制の大会で優勝を収めることができましたが、他の強豪国がタスクフォース型の強化に踏み切った結果、もはや同じ手法では結果を出せなくなってきているのです。

 前回のコラムで述べたように、15人制の代表に関してはタスクフォース型の強化から、新たな強化の体制に移行することが求められています。

 しかし15人制のラグビーと違い、7人制ラグビーの場合は国内リーグが存在しないケースの方が多いため、各国とも集中的な強化に移行するようになってきたのです。

【次ページ】 15人制のスターといえども、活躍できるとは限らない。

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