炎の一筆入魂BACK NUMBER
「劣っている自覚」こそ強さの秘密!?
広島の守護神・中崎翔太、究極の献身。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/07/06 11:50
B・ヘーゲンズ、J・ジャクソンの外国人でつなげて最後の中崎へ……という今季の勝利の方程式が首位広島の強み。
当たり前のように“イニングまたぎ”の覚悟も……。
同じ席でもうひとつ誓ったことがある。
それは9回の1イニングに限らず、“イニングまたぎ”する覚悟だった。
「9回を投げるだけが抑えじゃない。8回、9回を投げられれば、すごくチームのためになる」
その思いは、今も変わらない。
「ここ最近は2イニング目に失点することが多いので修正しないといけない。いつも全員が全員投げられるわけじゃないし、抑えが必ずしも1イニングしか投げなくてもいいというわけじゃない」
無休トレは、複数イニングを投げる体力強化にもつながる。
「One for all, All for one」の精神。
抑え投手が評価される「セーブ数」に、あまりこだわりがない。
「セーブ数というよりも、チームが勝つことに意味がある」
抑えというよりも、試合の最後を任せられている責任感が強い。試合の最後に先発投手からつながったバトンを受け、チームに勝利を届けるという責任。
「3点差以内だけに登板するわけではない。大差で勝っていても、負けていても投げる準備はしている。誰かがやらないといけないわけですから」
そこには唯我独尊の守護神像ではなく、「One for all, All for one」の精神が感じられる。
謙虚さは弱さではなく、反骨心をたぎらせ、向上心を育む源となった。もしかしたら、中崎にとって「劣っているという自覚」こそ、最大の武器なのかもしれない。