炎の一筆入魂BACK NUMBER
「劣っている自覚」こそ強さの秘密!?
広島の守護神・中崎翔太、究極の献身。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/07/06 11:50
B・ヘーゲンズ、J・ジャクソンの外国人でつなげて最後の中崎へ……という今季の勝利の方程式が首位広島の強み。
ブルペンから出てきた表情は、まさに鬼の形相。
2013年に患った血行障害も背景にはある。3年経った今も、その日によって状態が異なる。暑くなってきても、ウオーミングアップ時には手袋をつけ、試合後指先のマッサージをするなど細心の注意を払う。
試合が始まればストレッチで体をほぐし、試合を見ながら相手打者の反応をチェックする。緊張感が最高潮に達する最終局面で登板するためのボルテージを静かに上げながら、登板1イニング前から肩を作っていく。
普段の優しい表情から一変する。
ブルペンから出てきた表情は眉間にしわが寄り、鬼の形相だ。相手を威圧するだけでなく、自分自身に打ち勝った姿でもある。
中崎は140キロ台後半から150キロ台のストレートとスライダー、ツーシームが投球の軸となる。ずば抜けた球種はなく、すべての球種を使いながら打たせて取る。入団時から兄貴分として見守ってきた今村猛は、中崎の成長を「投げミスがなくなった。三振を数多く取るタイプではないですが、球に力強さも加わった」と話す。
一度たりとも負けたくないという驚異的な負けん気。
開幕から抑えとして順調にセーブ数を積み重ね、首位をひた走るチームに貢献する。
7月4日には監督推薦で、15日、16日に行われるオールスターゲーム初出場も決定。着々とその地位を確かなものにしている。
だが、本人は今の成績にまったく満足していない。
「僕の失敗がなければ、もっと上にいけていたはず。昨季あれだけ負けをなくしたいと言っていましたし、納得していない」
現在3敗。1度も負けたくない負けん気とさらなる高みを目指す欲求は、誰よりも高い。
昨オフの契約更改の席でも「僕の6敗がなければ、首位に近い位置にいられた。負けゼロを目標にしたい」と覚悟を決めた。