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バクー開催の新F1GPの評価は?
トルコ、韓国、インドの轍を踏むな。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2016/06/19 11:00
美しい城壁と古い石造りの町並みが続くアゼルバイジャンの首都バクーの市街。F1界の名物コースとなるか!?
ドライバーの差が出やすいコースに。
モナコやシンガポールのような低速コーナーが多い市街地コースであれば、ウイングを目一杯立ててダウンフォースをつけて走ればいいが、それではストレート区間でスピードが伸びずにオーバーテイクを許してしまう。
ゆえにバクーではセットアップが妥協を強いられ、ドライバーの腕の差が出やすく、アロンソが言う「エキサイティングでちょっとしたドラマが生まれるかもしれない」グランプリとなるかもしれない。
一方で、アゼルバイジャンでのF1開催を懸念する声もある。
それはF1がモータースポーツの文化がない国々へ進出しては撤退を繰り返しているからである。
消えてしまった、トルコ、韓国、インドのGP。
イギリスで発祥したF1がヨーロッパを離れて、世界へ進出していったのは2004年。
この年、バーレーンと中国で初めてF1が開催された。その後、トルコ('05年)、シンガポール('08年)、アブダビ('09年)、韓国('10年)、インド('11年)、ロシア('14年)と次々とF1初開催を実現していった。もちろん、理由は国を挙げてF1を招致したい政府から多額の開催権料が手に入るためである。
しかし、2004年以降にF1が誕生した8つのグランプリのうち、すでにトルコ、韓国、インドからF1は消滅してしまった。
中東のオイルマネー、経済成長を遂げるBRICS諸国をはじめとする新興国の経済力を手に入れてきたF1の世界進出だが、そろそろその手法に限界が生じ始めてきていることも確かだ。
またこのような新興国でのF1開催には、政治的な問題が常に付きまとう。
政治的弾圧を行う政府から多額の開催権料を徴収するF1が、人権団体から非難の的となるケースが少なくないからだ。