“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
フランス、ブラジル、韓国との激闘。
水原JS杯でU-19が得た貴重な経験。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/05/28 10:40
東京五輪世代のU-19代表。来年にはU-20W杯も控えている。この敗戦を糧に前へ進めるか。
「プレーをやりきらせない」フランスとブラジル。
町田の身長は187cmである。高さだけを考えるとフランスの代表選手たちに引けは取らない。しかし、空中戦は高さだけでない。飛ぶタイミング、空中でのバランス、そしてしっかりとボールを飛ばす力が求められる。このシーンのように、背の高さで勝てない場合でも、相手は「プレーをやりきらせない」ように何かしらの手を打ってくるものなのである。
競り負けそうな場面でも“相手にプレーをやりきらせないようにする”咄嗟の判断が、フランスとブラジルは非常に早かった。そういう判断をされた時の対処法が、この世代の日本代表にはまだなかった。常に正攻法でやろうとするあまり、相手の泥臭いプレーに結果的に凌駕されてしまっていた。2点目のシーンはまさにそれを象徴していた。
そして、一番の問題が3失点目だ。
25分、ボールはフランス陣内にあった。フランスの左サイドバックのシルヴァン・ドゥランドゥがボールを持った時、町田はラインアップを試みた。
判断は間違っていなかったが……。
「12番(ブラス)が裏を狙っているのは分かっていたのですが、僕的には4番(ドゥランドゥ)が中に一回当ててくると思って、そこを狙って前線からのプレスを仕掛けて奪い取ろうと思ってラインを上げたんです」
彼の判断は、ドゥランドゥが横パスもしくはボランチにパスを出して、そこから相手が裏を狙ってくることを想定したものだった。ラインを高くして、横パスもしくはCBやボランチがボールを受けた瞬間にプレスを掛けて、奪ってからのショートカウンターをイメージしていたのだ。
この判断は決して間違っていない。だが、その時の彼には「ある重要なイメージ」が欠けていた。それは「一発で裏にボールが飛んでくる」というイメージだ。
ブラスが今にも裏に飛び出す準備をしていることは、町田も視野に捉えていた。ということは当然、一発で裏に来ることも想定しなければいけない。
「まさか、ああいうキックが来るとは思わなかった。日本ではあり得ないくらいのロングフィードが……」(町田)