ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
長谷部誠「少し感傷的というか……」
残留の切なさは、長いキャリアの証。
posted2016/05/25 17:00
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
試合終了のホイッスルがなると、長谷部誠は自陣のペナルティーエリアで両ひざをついた。2部に降格する危機と向き合う日々からも、ようやく解放された。
ただ、1分もたたないうちに立ち上がると、そばにいたブルトゥイスを皮切りに、悲嘆にくれるニュルンベルクの選手に順番に声をかけた。健闘をたたえ、ときになぐさめていたのだろう。たとえそれが自分にとって会心の勝利であったとしても、長谷部はいつも相手の心情を思いやる。2011年にアジアカップで優勝を決めた直後も、決勝戦の相手となったオーストラリアの選手たちをねぎらっていた。
「自分たちが圧力はかけていましたけど、それほど多くのチャンスがあったわけではないですし。本当に、どっちに転んでもおかしくない結果だったとは思います」
5月23日、ブンデスリーガ1部で16位に終わったフランクフルトが、アウェーで行われた入れ替え戦のセカンドレグでニュルンベルクを1-0で下し、1部残留を決めた。
長谷部「バイエルンを相手にするアトレティコも」
今年に入ってから、フランクフルトに明るいニュースはほとんどなかった。
1月30日のアウクスブルク戦の後、フランクフルトは、13位から徐々に順位を落としていき、3月6日にはフェー前監督が解任され、コバチ監督が就任した。さらに、昨シーズンのリーグ得点王であるマイアーが怪我で戦列を離れるアクシデントも起こっていた。コバチ監督就任後2試合目で最下位のハノーファーは下したものの、相手によって戦い方をかえていく新監督のもとで思うように成績を残せなかった。
リーグ戦4試合を残した時点で、フランクフルトは自動的に降格の決まる17位に沈んでいた。入れ替え戦にまわる16位とは勝ち点4差、自動的に残留の決まる15位とは勝ち点差が6もひろがっていた。
しかし、90分のうちのほとんどの時間で守備にまわりながらも1-0で勝利したドルトムント戦を含めて3連勝をかざり、最終節前には、自動的に残留の決まる15位にあがっていた。
「もちろん面白いサッカーではないけど、残留争いのなかで、こういう戦い方をするしかないのは自分のなかで割り切れています。バイエルンを相手にするアトレティコだってそれは一緒。サッカーというのは、常に自分達が楽しいことをしているだけではないと、改めて考えさせられます」
長谷部もそう話していた。