球体とリズムBACK NUMBER
バーディー映画化で岡崎役は誰に!?
プロデューサーが話してくれた舞台裏。
posted2016/05/26 10:30
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
AFLO
「初めまして。ジェイミー・バーディーのエージェントからあなたの名前を聞いたんだけど、もし彼の映画について興味があれば、一度話をしませんか?」
エイドリアン・ブッチャート氏から突然のメールを受け取ったのは、レスターの優勝がいよいよ現実味を帯び始めてきた4月上旬のことだった。
文字通りのシンデレラストーリーを歩むバーディーの半生がハリウッドで映画化されるかもしれないという話は、昨年末ぐらいから現地メディアで報じられていた。その発案者であるブッチャート氏は、アメリカ西海岸の映画の都で活躍する英国人の脚本家兼プロデューサーで、『GOAL!』と『GOAL! 2』で興行的な成功を収めている。
「映画では、ジェイミーの相棒である岡崎慎司も重要な役回りになる予定です。もし可能なら、彼の役に合いそうな日本人俳優を教えてもらえると嬉しいのですが」
エリートとは対極にある選手の立身伝に日本人選手も大きく関わると聞いて、興味が湧かないわけがない。シーズン終盤はレスターの全試合を現地で観戦しているというブッチャート氏とスケジュールを調整し、プレミアリーグ最終節の日のランチタイム(現地時間)に電話インタビューが実現した。
──まずはバーディーの映画を作ろうと思った経緯から教えてください。
「最初に興味を持ったのは、彼がルート・ファンニステルローイの連続得点記録を破ろうとしている時だった。調べてみたら彼はつい4年前までセミプロで、プレミアリーグにデビューしたのは昨季だというじゃないか。普段の生活は実にシンプルみたいだし、いわゆるスーパースターにはない人間臭さを感じたんだ。きっと面白い物語になるだろうと直感したよ。そして実際に映画にしようと決めたのは、11月28日。そう、彼が連続得点の新記録を樹立した日だ」
──彼はシェフィールド・ウェンズデイの下部組織からファーストチームに上がれず、その後は工場で勤務しながらサッカーを続け、やんちゃだった若い頃には保護観察処分を受けた時期もあったそうですね。そんなエリートではない選手の成功譚は、確かに興味深いです。
「その通りだよ。実際、映画化を決めた頃に周りの人に話をしたら、『確かに面白いとは思うけど、もっと有名な選手を扱った方がいいんじゃない? (リオネル・)メッシとか、(クリスティアーノ・)ロナウドとか』というような反応が大半だった。でも僕は、ジェイミーの方が断然面白いと思った。
今、君が言ったような過去を持つ選手が、30歳手前で突然才能を開花させ、スターダムを一気に駆け上がってレスターの初優勝の立役者になった。この偉業により、現時点ではメッシやロナウドよりも有名かもしれないよ」