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本田圭佑とミラン、最後の“捨て身”。
コッパ決勝でファンを沸かせた変貌。
posted2016/05/24 07:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
仁王立ちだった。
数分前まで放心状態だった本田圭佑は、壇上でユベントス主将ブッフォンが優勝トロフィーを掲げる姿を仁王立ちになって見つめていた。自分の首にかけられた準優勝メダルには目もくれない。
21日のコッパ・イタリア決勝戦で、ミランはユベントスに0-1で惜敗した。一縷の望みをかけていたEL出場権獲得もならなかった。
ただし、先発フル出場した本田は乾坤一擲のプレーを見せた。そしてこの日に懸けていたのは、本田だけではなかった。
矛盾と困惑に満ちたシーズンの最後に、監督ブロッキは戦術最適解を見出し、主将モントリーボら選手たちは、死に物狂いでボールへ食らいつきながら王者ユベントスを追いつめた。
“勝負をかけたミラン”を見たのは、何年ぶりのことだろう。
荒削りでも、勝利への意志に満ちた4-3-3。
黄昏どきのスタディオ・オリンピコを埋めた約7万人の大観衆は、キックオフの笛と同時に思いがけない光景を目撃することになった。
新布陣4-3-3を組んだミランの3トップが、ユーベの3バックに対し猛然とハイプレスを仕掛け始めたのだ。3トップの右FWとして、本田も対面のDFキエッリーニへ果敢に向かっていった。
リーグ最終戦でローマに惨敗してから1週間、監督ブロッキは大胆なチーム改造に踏み切った。トップ下ありきの4-3-1-2を要求するオーナー指令に背き、ハードワークを厭わない選手のみを起用することを明言した。
ぶっつけ本番の4-3-3は荒削りだった。初めての大舞台に抜擢された弱冠19歳のSBカラブリアのサイドチェンジも、21歳のCBロマニョーリの足元もぎこちない。
だが彼らの気迫は、主将ブッフォン以下主力を温存したユーベを押し込んだ。
本田が右サイドから中央へ突破を図った31分のドリブルは、ユーベMFポグバのファウルによって止められたが、ドリブルの切れ味は完全に戻っていた。ミランの10番は、大一番にフィジカル・コンディションをきっちり仕上げてきたのだ。