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長谷部誠「少し感傷的というか……」
残留の切なさは、長いキャリアの証。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/05/25 17:00
長谷部誠は残留を決めた直後も、嬉しそうな表情は見せなかった。各クラブといい関係を結んできたことの、辛い一面だ。
入れ替え戦の相手は、まさかの古巣ニュルンベルク。
ただ、残留争いではじめて追われる立場となって迎えた最終節、16位のブレーメン相手に0-0で耐えながらも89分にゴールを許し、敗戦。入れ替え戦に回ることになった。そして、入れ替え戦の相手は2部リーグで3位に入ったニュルンベルクとなった。長谷部が2013-14シーズンにプレーした古巣である。
「個人的には、複雑な気持ちはもちろんありますけど、ここに今いるからにはフランクフルトのために全力をあげてやるだけです」
長谷部は入れ替え戦について、試合前そう話していた。
ただ、ホームでのファーストレグでは、前半はニュルンベルクにペナルティーエリアで一度もボールに触れさせなかったが、43分のルスのオウンゴールでビハインドを背負い、65分にガシノビッチのゴールで同点に持ち込むのが精一杯の戦いだった。
そして、ニュルンベルクに舞台を移して5月23日に行なわれたセカンドレグでは、初戦で得たアウェーゴールによって、0-0の引き分けでもニュルンベルクの1部昇格が決まる状況だった。
低い得点力でも、なんとか奪った1点。
フランクフルトは、コバチ監督が就任してから相手の特徴を消す戦いに取り組んできた。結果として守備は安定したが、攻撃では迫力と決定力を欠き、得点力に問題をかかえていた。
そのため、試合開始時からニュルンベルクは守備をかためてカウンターを狙い、フランクフルトがボールを持たされた展開となった。フランクフルトもなかなかチャンスを作れなかったが、66分にガシノビッチが左サイドをえぐったクロスをセフェロビッチが押し込んで、先制。攻勢に出たニュルンベルクのパワープレーをどうにか跳ね返し、1点のリードを守りきって1部残留を決めることになった。
「こういう戦いの中では、ガシノビッチのような、若くて、ラッキーボーイ的な存在が出てくると大きい」
試合後に長谷部は、入れ替え戦で1ゴール、1アシストを記録したチームメイトの活躍をたたえていた。