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清武弘嗣は「証明書」を持っている!
ドイツで確立した“使う側”の評価。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2016/05/19 10:40
ハノーファーにおいて、清武は文句なしにチームの中心だった。その評価は、日本にいて感じる以上にドイツでは高いのだ。
香川の活躍を自分に重ね「有名になりたいんすよ」。
「(香川)真司くんが活躍できるなら、自分もできると思う」
練習場で話を聞いた時からさらに遡って、今から4年前の2012年5月、ニュルンベルクへの移籍発表会見で、清武はこう話した。もちろん、ライバル心に由来する若者の生意気なコメントではない。清武は、香川真司という1つ年上の先輩を、渡欧する自分にバッチリ当てはまる成功の指針として捉えていた。
言葉の真意は、次のとおりだ。
「同じポジションであることも含めて、真司くんを見ていると自分のこともイメージしやすいんですよ。単純な話、ゴールを決めれば俺もああいうふうになれるって。攻撃的な選手には、ゴールを決めるチャンスがある。それを自分の力で示すことができれば、真司くんみたいになれる。そうイメージできる」
ただし、本人によるその解説には違和感を覚えた。たとえポジションが同じでも、香川と清武はタイプが異なる。大きく分ければ、香川は“使われる側の選手”であり、清武は“使う側の選手”。そう考えていたが、「有名になりたいんすよ」と無邪気に笑う彼を前に、野暮な突っ込みは避けた。
“使う側”としての存在感は際立ってきている。
あれから4年。あの頃の面影は、今の清武にはない。ドイツに来てまで不運にも2度もの降格を味わうことになったが、それも結果的には、チームのリーダーであり“使う側の選手”としての存在感を際立たせ、彼は「個」としての能力を示す確かな証明書を手に入れることができた。
それを引っ提げて挑む新天地での挑戦は、清武のキャリアにとってやはり大きな意味を持つことになるだろう。勝負に出るなら、4年前の吉田麻也がそうであったように、今度はオーバーエイジの一人として五輪の舞台に立ち“もうひと押し”を狙うのもいい。
鮮烈な日本代表デビューから5年。これまでの彼は、本田圭佑や香川真司、長友佑都や内田篤人の存在感を上回ることなく鳴りを潜めていた。しかし岡崎慎司と同様に、地道な努力が結果となって表れるタイミングは、もうすぐそこまで来ている気がしてならないのである。