セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
本田圭佑の目から「熱気」が消えた。
“腐ったミラン”で過ごす覚悟は?
posted2016/05/17 17:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
膝に手をつき、口を開け、苦しそうに喘いでいた。
あれほど疲弊し、憔悴した本田圭佑は見たことがない。
サン・シーロでの今季ラストゲーム。残り10分を切ったあたりで、ミランの10番の表情に、失望の色が浮かんだ。
今季のセリエA最終節、ミランはローマに1-3で敗れた。
FWバッカのゴールこそあったものの、試合内容としてはローマに手も足も出ず。完全な惨敗だった。
先発フル出場した本田も、再三あった決定機を生かせず、その度に力なく首を振った。
リーグ戦の最終順位は昨季の10位から7位へと上がったが、チームのパフォーマンスとしては成長するどころか、むしろ弱体化し崩壊状態に陥っている。名門再建は、年を追う毎に遠のくばかりだ。
一体なぜ、こんなことになってしまったのか。本田は自問を繰り返しているにちがいない。
今季のハイライトは、1月のミラノ・ダービー。
今季の序盤、新任のミハイロビッチ監督からトップ下をまかされた本田は結果を残せず、また昨秋にクラブ批判騒動を起こしたことでプレー機会を一時失った。
それでも、チームの低迷による4-4-2への戦術変更で、右サイドハーフで起用されるようになった10番は、徹底した守備への献身と右サイドからのアシストに活路を見出し、指揮官の信頼を再び得てレギュラーポジションを奪回。1月から2月にかけて記録した、12試合連続公式戦無敗の好成績を支える原動力となった。
3-0で完勝した1月末のミラノ・ダービーで、約8万人のスタンディング・オベーションを受けた瞬間が、今季の本田のハイライトだったのは間違いない。
しかし、春先に気を緩ませたチームは、3月以降に急失速した。来季のEL出場圏である6位確保が危うくなり、32節でユベントスに敗れると、オーナーのベルルスコーニ元首相はミハイロビッチ解任を強行、ユースチームを指導していた子飼いのブロッキ監督を後任に据えた。