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清武弘嗣は「証明書」を持っている!
ドイツで確立した“使う側”の評価。
posted2016/05/19 10:40
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph by
AFLO
清武弘嗣の去就が、注目を集めている。
所属するハノーファーが今季のブンデスリーガを最下位で終え、来季の2部降格が決定した。このチームのエースであり背番号10の清武には、国内外からいくつかのオファーが舞い込むだろうと報道されている。
これまでどのチームでもエース級の立場にありながら、Jリーグ時代を含めて自身3度目の降格である。サッカーにおける「個」は、あくまでチームの勝利に貢献するために存在しているから、もちろん「結果を残している」とも言い難い。
それでも、清武の「個」としての歩みは着実に前進している。
ブンデスリーガで最下位のクラブとはいえ、日本人選手が背番号10を託される意味は小さくない。ドイツにおいては真面目で順応性が高いという性質から、日本人選手は戦術を機能させる駒として一定の評価を勝ち取ったが、ハノーファーでの清武は「違いを見せられる選手」であり続け、攻撃の全権を託された。
ピッチ内では、“使われる側の選手”ではなく“使う側の選手”。それを評価されての移籍となれば、間違いなく新天地での戦いは彼にとって大きなステップアップの可能性を秘めることになる。
今年の11月で27歳。「ここが勝負」という思いは、きっと彼の中にもあるに違いない。
1年半前に「伸びているという実感はありません」。
約1年半前の2014年10月末、ハノーファーの練習場で話を聞いたことがある。
この年は、清武にとってせわしない1年だった。所属するニュルンベルクの2部降格が決まり、迎えたブラジルW杯でピッチに立ったのはコロンビア戦の8分間のみ。7月にはハノーファーへの移籍を発表し、ドイツ国内とはいえ新しい環境に身を置いたタイミングでの言葉だ。
「でも、今は本当に充実していますよ。また環境が変わって、今はまだ、ケガ人が出たことで試合に出ている状況ですけどね。この状況を続けられるように頑張らないと」
ドイツに渡って約2年半。「充実」という言葉を少しもの足りなく感じて、「伸びている実感は?」と返した。
「いや、正直、伸びているという実感はありません。やっぱり、ドイツのサッカーと日本のサッカーって、全然違うじゃないですか。こっちに来て2年半くらい経って、今はただ、ドイツのサッカーに慣れたというか、慣れつつあるというか、そういう感覚のほうが強い」