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清武弘嗣は「証明書」を持っている!
ドイツで確立した“使う側”の評価。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2016/05/19 10:40
ハノーファーにおいて、清武は文句なしにチームの中心だった。その評価は、日本にいて感じる以上にドイツでは高いのだ。
“慣れる”と“伸びる”は明らかに違う。
“慣れる”と“伸びる”は、彼の中では明らかに違う。
「だから、葛藤はあります。うまくなりたい、成長したいと思ってこっちに来たのに、2年半もやって『慣れた』ってだけじゃ……。海外のサッカーに自分の体とか技術が慣れたとしても、やっぱりそれだけでサッカー選手として成長したとは言えないじゃないですか。
レベルの差じゃなく、サッカーそのものが全く違うという意味で、日本だったらこういうふうにできたのにと思うことはあるし、もっとこうしたいと思うこともあるんですよ。ただ、こっちじゃ、まずはそれに慣れないと何も始まらない。その実感は確かにあるので、大切なのはここからかな」
ブラジルW杯からは4カ月が経っていた。「目指すところは?」と聞くと「とにかく結果ですよね。目に見える結果」と即答した。彼は、よく理解していた。結果こそ、自らを次のステージに引き上げるために、“慣れた”自分を“伸ばす”ために必要なものである。
いずれビッグクラブに、と望んでいた。
もし彼がチャンピオンズリーグを舞台とするクラブでのプレーを望むなら、そこにふさわしい「個」であることを示す証明書を持たなければならない。それを自分で作ることが、おそらく当時の清武にとって明確な目標の一つだったのだろう。
「ビッグクラブですか? 正直なところ、自分でも最初からいずれそうなることを望んでいたし、今ももちろんそうです。でもこのチームにいるという現状があるので、とにかく目の前の環境で結果を残すしかないですよね。でも、悩んでるわけじゃないですよ。焦りも全くない。今はただ結果を出して、自分が出たことのない大会に出たり、そういうふうにレベルアップしていけたらいいなと思ってるんです。ヨーロッパのカップ戦に出て、心も体もしんどくなるような過密日程も体験してみたいですよね」
あれから1年半、今の清武はドイツ国内なら間違いなく通用する証明書を手にしたと言える。だから「次」が、楽しみなのである。