フットボール“新語録”BACK NUMBER
“なでしこブーム”後の生き残り策。
長野パルセイロの集客力はなぜ高い?
posted2016/05/16 10:30
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
J.LEAGUE PHOTO
「女子サッカーの火を消したくない。首都で消えてしまうなら、地方で火をつける。そのためにも面白いサッカーをしなければならないと思っています」
本田美登里(長野パルセイロ・レディース監督)
まさにファンの力が起こした奇跡だった。
5月8日、なでしこリーグ第8節、南長野運動公園総合球技場――。昇格1年目の長野パルセイロ・レディースは、皇后杯王者のINAC神戸に圧倒され、前半を終えて0-2とリードされていた。長野にもなでしこジャパンの横山久美がいるが、大野忍や鮫島彩などINACとは代表選手の数が違う。
スタジアムにいた長野のアンバサダーを務める土橋宏由樹(パルセイロの男子チームで4年間プレー)も、「やっぱりINACはうまい」と力の差に愕然としていた。
だが後半、本田美登里監督の采配が流れを変える。ハーフタイムにMF大宮玲央奈の代わりに齊藤あかねが入ると、前線に起点ができるようになった。コーナーキックから1点を返すと6733人で埋まったスタジアムが沸騰し、鳴り響く手拍子の後押しを受けて長野は3-2で逆転勝利した。
サポーターの応援が、選手の足を動かせる。
第8節時点で、長野はINACと勝ち点で並んで3位(首位・日テレとの勝ち点差は3)。失点はリーグ最多だが、得点もリーグ最多で、攻撃力で守備の弱点を補っている。
アンバサダーの土橋は、INAC戦をこう振り返る。
「普通、応援はゴール裏がメインだと思うのですが、この日はメインスタンドとバックスタンドまでもが一体となって応援していた。サポーターの応援によって、選手は届かないところに足が出ていた。みんなで勝ち取った勝利。今やどのイベントに行っても『レディースはすごいね』と声をかけてもらえる。長野の女子サッカーにおいて、歴史を変える試合になるかもしれません」