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“なでしこブーム”後の生き残り策。
長野パルセイロの集客力はなぜ高い? 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2016/05/16 10:30

“なでしこブーム”後の生き残り策。長野パルセイロの集客力はなぜ高い?<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTO

チームを率いる本田美登里監督は現役時代読売ベレーザで活躍し、'07年に女性初のS級コーチライセンスを取得した。

なでしこリーグの今季最多入場者数を記録。

 それにしても、6733人は驚くべき数字だ。これは今季のなでしこリーグで最多の入場者数。実は4月30日の岡山湯郷ベル戦でも、3648人を集めていた。8節時点で、長野は平均観客数もリーグトップである。

 なぜこれほど多くの人が長野の観戦に訪れたのだろう? アンバサダーの土橋は喜びを抑えるように答えた。

「正直に言うと、集客のために特別何かをしたわけではないんですよ。あえてあげるとすれば、地上波で中継された2つの試合で、おもしろい内容のサッカーで勝ったことが大きかったと思います」

注目カードと、メディアに恵まれた土地柄の相乗効果。

 昨季まで長野パルセイロ・レディースの試合が、地上波で中継されたことは1度もなかった。だが2部優勝の直前からニュースで映像が取り上げられ始め、ついに今季のホーム開幕戦(対コノミヤ・スペランツァ大阪高槻)で初中継が実現。NBS長野放送が中継し、長野は5-2で快勝した。

 次に中継されたのは第6節の岡山戦。なでしこジャパン主将の宮間あやが来ることで話題になり、さらに担当局のテレビ信州が澤穂希をゲスト解説として呼び寄せた。テレビ局が告知を繰り返し、雪だるま式に注目が高まっていく。長野はシーソーゲームを制し、3-2で接戦をものにした。

「地上波の力はすごく大きいと感じました。もちろんテレビ中継をやることによって、『スタジアムに行かなくてもいいんじゃないか』という人もなかにはいると思う。でも、試合を知るきっかけとして、県全域に届く。それがINAC戦の爆発的な観客数につながったと思います」

 もともと長野は、メディアに恵まれた土地だという。

「民放4局とNHKがあり、その5社がそれぞれスポーツ番組を持っていて、どこもサッカーに力を入れている。たとえば松本山雅のニュースをやると、『山雅だけやるわけにはいかない』となって、パルセイロも取り上げてもらえる(笑)。アウェーの人から『長野は報道陣の数がすごいよね』とよく言われる。僕のアンバサダーという仕事が成り立つのも、ラジオも含めると、すごく出演のニーズがあるからなんです」

【次ページ】 観客を増やすうえで、専用スタジアムの効果は絶大。

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本田美登里
土橋宏由樹
長野パルセイロ

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