熱血指揮官の「湘南、かく戦えり」BACK NUMBER
湘南がGW中に2連勝&悔しい1敗。
曹監督日記より「戦った選手に敬意」。
posted2016/05/11 17:00
text by
曹貴裁Cho Kwi-Jae
photograph by
Shonan Bellmare
本連載では、湘南ベルマーレを率いる曹貴裁監督が、試合に臨むまでの過程を記した前週の日記と実際の試合結果を受けての胸中を同時に紹介。
悩み、考え、決断する監督のリアルな声を毎週お届けします!
今週は、「ゴールデンウィーク3連戦」の苦闘を振り返ります。
*本連載ではチョウ・キジェ監督の氏名表記方法につきまして、湘南ベルマーレとの協議により「曹貴裁」と統一いたします。
<第11節・FC東京戦前週の監督日記>
●5月3日(火)
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横浜FM戦(4/30 1-0で今季初勝利)に臨むにあたっては、選手には多くを考えすぎずに感じたままに率直にプレーするようにと働きかけた。脳で言うと新皮質でなく旧皮質で感じたことに従ってプレーしなさいと。
試合2日前の紅白戦、ワンプレーごとに話し合っていたりハーフタイムに相手チームの選手も交えて討論をし合っている選手の様子を見てどこか違和感を抱いていた。
改めてビデオでもその映像を見直したら、みんな頭で考えすぎて、考えてからプレーするからアクションがそれぞれ遅いことに気がついた。もちろん話し合って考えてプレーすることはすごく大事なんだけど、ピッチに入ったら「ここでボールが取れる」と思えば理屈じゃなくそれに従って自然に体が動くプレーを選択すべき。我々の良さは攻守にダイナミックにプレーすることだし、それをやる勇気やチャレンジ精神がまず必要。そういう部分に立ち返らせて、それが選手の感じていたことともシンプルにリンクした様子があった。
やはり監督として、選手が今何を感じているか、どういう気持ちでやっているかというところの観察を絶やしてはいけないし、それに合わせてしっかりアプローチをしなくちゃいけないと改めて感じた出来事だった。
結果的に横浜FM戦は、ボールを持っている時に比べ持っていない時の方が走る量が倍くらいになり、スプリントの数も相手にボールがある時の方が50~70回多いような展開になった。それでも選手たちは自分たちのリズムで戦えなくても「絶対に勝つんだ」という気持ちを持ち続けていたし、その気持ちが相手より少し上回ったことだけがこの試合の勝点3をもたらしたと言っても過言ではない。
サッカーを構成する要素は戦術やフィジカル、技術など色々あるけれど、この試合では人間が本当に「そうしたい」という欲求のままにプレーした時に生み出す力が、理屈では語ることができないくらいに凄いものだと感じた。試合後モンバエルツ監督と挨拶を交わした後にベンチに戻り、数人の選手が泣きじゃくっている様子や、100%の力を出し切ったというみんなの表情を見ると、この一戦への思いをすごく感じたし、監督として心が震えた。内容的には足りないところも多くあった試合だけど、そういうところを超えたものを見せられた試合というのは、監督を務めて5年経つ中で唯一と言えるかなと感じた。