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100mの奥深さを思い知った川崎GG。
ガトリンに挑んだ桐生と山縣の「明暗」。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKoki Nagahama/Getty Images
posted2016/05/09 17:00
新しいスタート方法を練習して臨んだ桐生だったが出遅れて4位。山縣はスタートで躓いたが立てなおして2位。サニブラウンは5位だった。
メンバー中最下位のリアクションタイム。
桐生もまた、スタートでミスを犯した。
「スタートしたときに完全に遅れました」
リアクションタイム(スタートへの反応を示すタイム)は0秒184と最下位。
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「自分が思っているよりも(スタートが)ワンテンポ早く来て。日本のレースは遅いと勝手に思っていました」
完全な出遅れとなった理由を語る。
結果、アメリカで学んだ新しいスタート方法もいかせなかった。
「最初の30がよくなかったら、あともよくないという自分のよくないパターンになりました」
半ば怒りを含むような口調で話し続けた。
桐生「次勝つときは、何も言わせないタイムを」
山縣がここまで復調を果たせた裏には、悔しさがあった。
「ロンドンは自分が若手だったけれど、怪我したこの4年でどんどん若手が出てきて、少し焦りもありました。自分の走りができない悔しさもあり、それでも勝ちたいと思いながら負ける悔しさを4年味わってきたので、負けたくないとトレーニングできたのがよかったと思います」
山縣が悔しさをばねにしたのを考えれば、桐生にとっては、今大会が次への材料となる。当の本人も言う。
「次勝つときは、何も言わせないタイムを出します。今日のことを忘れられるようなタイムを出したい」
2人の走りからは、あらためて100mの奥深さが垣間見えた。試合に臨む心境の持ち方が走りに響く繊細さ、わずかなミスが響く怖さ……。
その中で勝負に激しくこだわる両者は、得た自信、悔しさ、それぞれをいかし、次へ進もうとしている。経験を重ねながら、9秒台を目指していく。
「条件とかコンディが合ったときに9秒台が出る手ごたえは昔より持っています」(山縣)