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100mの奥深さを思い知った川崎GG。
ガトリンに挑んだ桐生と山縣の「明暗」。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKoki Nagahama/Getty Images
posted2016/05/09 17:00
新しいスタート方法を練習して臨んだ桐生だったが出遅れて4位。山縣はスタートで躓いたが立てなおして2位。サニブラウンは5位だった。
山縣「ロンドン五輪と緊張の種類が似ていた」
レース後、山縣はこう振り返った。
「(これだけ緊張したのは)ロンドン五輪のときくらいです。緊張の種類が似ていました。自分の力が通用するのか、今の走りが通用するのか分からない。ふたを開けてみないと分からない」
それがミスにつながった。スタート直後につまずいたのだ。
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緊張には、別の要素もあった。
「桐生に勝ちたいとか、ガトリン選手に勝ちたいとか、そう思わないようにしていたのですが、雑念も入ってきてしまって反省です」
しかし、表情は明るかった。
「思ったほど中盤で離されなかった」
スタートで失敗すれば、それは致命傷になりかねない。だが、それを引きずらず2位でゴールできた。
「よく2番に入れたなと」
「ガトリン選手にも思ったほど中盤で離されなかった」
だから、山縣は言う。
「自信になりました」
そもそも勝ちたいと思ってしまったのは、裏返せば、自身の状態に一定の手ごたえを持っていたからだろう。「今日は勝てると思ったから緊張した?」との質問に、「そうですね」と答えているのも、それを裏付ける。
一方の桐生は、ただ悔しさをみなぎらせた。
「負けた人がどれだけ言っても、言い訳になります」