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100mの奥深さを思い知った川崎GG。
ガトリンに挑んだ桐生と山縣の「明暗」。
posted2016/05/09 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Koki Nagahama/Getty Images
走り終えたあと、両雄は、対照的な表情を浮かべた。
5月8日、ゴールデングランプリ川崎。等々力陸上競技場に集まった観客数は約2万3500人。2011年の創設以来、最多となった。
各種目に国内の一線級がそろい、海外からもトップアスリートが参戦する中、皆が楽しみにしていたのが男子100mである。見ごたえのある顔ぶれがそろったからだ。
桐生に山縣、サニブラウンにガトリンまで。
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昨年、日本人初の9秒台への期待を抱かせるなど、この数年柱となってきた桐生祥秀の、国内今季初戦である。3月から4月にかけてのアメリカ遠征で自信を深めてのレースだ。
ロンドン五輪で準決勝進出を果たすなどエースの期待を集めながら長期間腰痛などに苦しんできた山縣亮太もいる。4月29日の織田記念では向かい風2.5mという悪条件のもとで10秒27という好タイムをマーク、復調を示しての試合だ。
さらにはアテネ五輪金メダル、ロンドン五輪銅メダルのジャスティン・ガトリン(アメリカ)、10秒00を持つ張培萌(中国)、加えてサニブラウン・アブデルハキームら日本の若手も出場。多くの人々が足を運んだのも納得の行くメンバーだった。9秒台への期待もあっただろう。
出場選手一人ひとりの紹介で沸いた大歓声と拍手は、吸い込まれるように静まった。
「set」(用意)
合図とともに、選手たちが構える。
スタート。選手たちが飛び出た瞬間、爆発するように、歓声が響き渡る。
疾走する選手たち――向かい風0.4mの中、トップで駆け抜けたのはガトリン、10秒02。2位には山縣、10秒21。桐生は10秒27で、ラモン・ギテンズに次ぐ4位に終わった。